第5章 計画
「全く…それで?あなたは一体、何をしに来たんです?」
「えーっと…仕事、凄い大変そうだなぁ、と思いまして。ちょっとでも手伝えることはないかと…。」
「邪魔です。必要ありません。そもそもあなた、神牙の文字が読めないでしょう。」
うっ…!凄いズバッと言う…!!
それだけ言うや否や話は終わったとばかりに三成さんはまた机へ向き直り資料へ視線を落としてしまった。…めげないぞ。
「でも…水攻めって相当な人員やお金が掛かりますよね…?1人で準備するのは大変じゃないですか?」
「問題ありません。秀吉様に言われた事は必ず完遂します。」
「それなら私も手伝いを…!」
「結構です。私の仕事を思うなら、部屋から出て行って下さい。それが一番助かります。」
この言われよう。私三成さんに何か悪いことしたっけなぁ…。思い当たらない。けど、この城で暫く暮らすからには三成さんとも仲良くなりたい。そう思う事は傲慢なのかな…。
「どうしてもダメですか…?他の方法を考えるとか…。」
「はぁ…。ひとつ言わせて頂きますが…水攻めは秀吉様のご提案です。秀吉様の行動全てに考えがあり、意味があり、そしてそれは…人を幸せにするものです。現に、私もかつて秀吉様に救われ…ーー」
「三成さんも?」
思わず1歩身を乗り出して聞くと彼はしまった、とばかりに慌てた様子で口を噤んだ。
「…少々お喋りが過ぎましたね。今の無駄な時間のせいで、作業に遅れが生じました。計画には些細な綻びも許されません。これ以上、邪魔しないで下さい。」
「じゃ、じゃあせめて見学させて下さい!話し掛けたりしませんから!」
「…好きにして下さい。」
やった!若干根負けした様子はあるけど許可は得た。私は部屋の隅っこに座り三成さんの様子をただ無言で眺める。真剣な眼差しで資料を視線で追っている。三成さんは本当に秀吉さんを尊敬していて、尚且つ信頼もしているんだな。だからこそどんな無茶にも応えようとしているのだろう。とてもすごい事だと思う。
「………。」
「……。」
ただただ無言の時間が流れる。私は苦では無いけれど。それにしてもやっぱり私も神牙の文字を読めるように勉強した方がいいのかな…。これに関しては本当にからっきしだから何も出来ないのがもどかしい。
「………。」
「………。」