第5章 計画
目が覚めると秀吉さんは既に居なかった。なんだか凄くぐっすり眠れた気がするな…。身体を起こし瞼を擦って着物を正す。顔、洗おう。部屋から出てさっさと顔を洗い口の中を濯ぐ。簡単に身嗜みを整えた所で大広間に行くと三成さんとすれ違った。
「おはようございます、三成さん。」
「おはようございます。私は急いでいるので失礼します。」
それだけ言ってさっさと廊下へ消えてしまった。うーん、中々三成さんと仲良くなるのは難しそうだ…。そのまま大広間へ足を運ぶと、既に皆揃っている。
「利家、軍議終わったの?」
「ん、おぉ!昨日聞き回った賊の根城が分かったから、沈めるための案が今纏まった所だ。」
「ふふん、何と今回は!空前絶後の水攻めだよー!」
水攻め…?本拠地を水でそのまま沈めるってことかな。
けれどそんな大規模な策、凄いお金や人員が必要なんじゃ…?
「どうやるんですか?」
「それを今、三成が段取りを立てる為に部屋に戻ったんだよ〜。」
「えっ!?丸投げ!?」
「いつもの事だ。」
「そーそー。普段もこんな感じだぜ。」
そ、そんな無慈悲な。皆で考えるものじゃないのか…?三成さんにそんな負担掛けていいの…?
「そんな顔しなくても大丈夫、三成なら絶対出来る。うちの参謀役は優秀だよー?」
「そうは言っても…官兵衛さん、乗馬の練習はまた別の日にお願いします!私、三成さん手伝って来る!」
それだけ言い残し先程廊下の奥へ消えて行った三成さんを追いかける。部屋何処だったかな…。なるべく足音を忍ばせて歩いていると、一室から本を捲る音がした。ここかな。
「三成さん、入ってもいいですか?」
「…どうぞ。」
襖を開いてみると三成さんの部屋は山積みにされた紙束や本で埋め尽くされていた。莫大な量の資料だ…。これを1人で目を通しているとなると本当に大仕事だと思う。
思わず感心して部屋を見渡していると、呆れ混じりのため息が聞こえてきた。言わずもがな、三成さんの。
「人の部屋に入った途端、きょろきょろと周りを見渡すのはいかがなものかと思いますが。」
「あ、すみません。想像以上の資料だったのでびっくりしちゃって。失礼します!」
数少ない足場を利用し中に入って襖を閉じる。三成さんは机から少しだけ私へ身体を向けてくれた。