第4章 日常
「…そう言われたのは初めてだ。私はこの色が余り好きでは無かった。」
「どうして?」
「血の色と同じだろう。」
「血はもっとドス黒いですよ。どちらかと言うとルビーみたいです!」
「ルビ…?」
「あ、いや…キラキラしてて、綺麗って事です。」
宝石もこの時代…というか神牙には無いんだね。そしたら伝わらないか。表現に頭を悩ませていれば、ふと隣から短く笑う声が聞こえた。ぱっと官兵衛さんの顔を見てみると何処か嬉しそうに頬を緩めている。わ、笑った…!
「この眼を好きだと思った事は無かったが、あなたが綺麗と言うのなら…悪くないと思える。」
「ふふ、それは良かったです。」
「私はそろそろ自室に戻る。…また明日。」
「はい!おやすみなさい。」
立ち上がった官兵衛さんの背中を見送る。思わぬ場所で官兵衛さんと話が出来たな。取っ付き難い人かと思っていたけど、そうでもないかもしれない。
…私もそろそろ部屋に戻ろう。縁側から立ち上がり自室へ向かう。いつも通り襖を開いた所で予想していなかった光景に自然と眉が寄った。
「……何してるの?」
「おかえりー。今日は一緒に寝よう!」
「いや、全然意味が分からないんだけど…。」
当然のように布団に寝転ぶ秀吉さん。勿論普段の武装は無く、着物だ。何故?ここ私に貸してくれた部屋で合ってるよね?合ってるわ。
「私が秀吉さんの部屋で寝ればいい?」
「だーめ、ほら早くこっち来て!」
ぽんぽん、と1組しかない布団の空いたスペースを叩かれる。だーめ、じゃない。
「布団もう1組…。」
「残念、部屋にあった残りの布団は片付けちゃった。」
「……廊下で寝るね。」
「風邪引くでしょ?観念して隣おいで。」
ぐ…っ。この人、1度言い出すとテコでも動かないな…!!仕方なく部屋へ踏み入れ襖を閉める。そのまま布団まで歩み寄り正座した。
「どういうつもりですか?」
「いやー、せっかくだしが居た世界の事もっと聞きたいなーと思って。」
「布団1組である必要ないよね?」
「どうせなら抱いて寝たい。」
「恋人でもない男に抱かれて寝るのはちょっと。」
「抱き枕とでも思ってよ。抱き締める以上に手は出さないからさ!」
「でも…。」
「ほら、もたもたしない!」