第4章 日常
「うわっ!」
手を強引に引かれ布団へ倒れ込む。この人のこういう強引過ぎる所、どうかと思う…!
そのままあっという間に引きずり込まれてしまった上に片腕に抱き込まれ身動き取れなくなってしまう。お互いただの着物という事もあり密着が深まる事でほんのり体温が伝わり、どうしても緊張してしまう。
「は、離して…。」
「良いから良いから。それより、の居た世界ってどんな感じ?馬に乗れないみたいだけど、移動はどうしてたの?」
「……自転車とか、車っていう機械があるの。馬より揺れないし、移動も早いよ。」
「機械?」
「うん、からくり、って言えばいいのかな…。鉄の塊が油で動くんだよ。」
「油で!?凄いなぁ、想像もつかない。作れる?」
「絶対無理。」
「えー。」
結局、離してもらうことも出来ずぽつりぽつりと会話を続ける。秀吉さんはその間ずっと軽く背中を摩ってくれた。こんなことされるの、幼稚園以来だな…。なんか落ち着く。
「ねえ、の世界で食べてたものが食べたい。今度作ってよ。」
「うん、良いよ。それくらいなら作ってあげる。」
「やった!楽しみだなぁ!」
嬉しそうに声を弾ませる秀吉さんと対照的に私は徐々に眠気が強くなって来る。人肌って、すごい。こんなに眠くなるなんて。
「眠い?」
「ん…。」
「いいよ、ゆっくり眠って。安心しておやすみ。」
遠のき始める意識の中で、秀吉さんの声がした。…この人は、この人なりに気を使ってくれたのかも、しれない。
「おやすみなさい、秀吉さん。…ありがとう。」
「また明日。」
閉じた瞼にちゅ、と小さなリップ音がした気がしたけれど、気の所為という事にして私はそのまま意識を落とした。