第4章 日常
店主にお金を払い再び城下を歩き始める。色んな反物屋や櫛や簪を置いた小物屋などがあり、ついキョロキョロしてしまう。そんな私を見かねてか利家に手を掴まれる。
「そんな目移りしてるとはぐれるぞ。ちゃんと付いて来い。」
「…うん、利家ってお兄ちゃんみたい。」
「お前ほっとくと危なっかしいんだよ。」
昔それ、よく言われたな。思わず苦笑いを零す。それから真面目に城下町の人達に賊について聞き込みを進めた。私にはさっぱり分からなかったけれど利家にはちゃんと伝わったようで何となく根城の目星が付いたらしい。
「情報も集まったし、そろそろ戻るか!」
「町の人たち、本当に困った顔してたね…。」
「そうだな、直ぐにでもとっちめてやりてぇけど勝手に動くと秀吉に怒られるからなー…。」
「下手に逃したらまた大変そうだもんね、1人2人じゃないみたいだし。」
「そうなんだよ!!変に統率も取れてるから厄介だぜ…。」
来た時と同じ様に利家と他愛ないことを話しながら城へ戻ると門前で秀吉さんが立っていた。何しているんだろう。
「ただいまー。何してんだ?」
「遅いから心配してたんだよ。、城下町はどうだった?」
「楽しかった!いろんな人たちが居て、色んなお店があって。」
「良かった!俺と婚約を結ぶ気になった?」
「それとこれとは違うよね?」
「素敵な城下町を築く旦那さんだよ?」
「確かに素敵だけどまだ会って3日だからね?」
「一目惚れに日数は関係無いよ。」
ふふん、と鼻を鳴らしドヤ顔を浮かべる秀吉さん。一目惚れ、なんて言葉程信用ならない台詞って有るだろうか。ただのタラシにしか見えないんだよなぁ。
そういえば、私異世界から来たって事をこの人達に伝えていないんだっけ。言った方が良いのかな…。言ったら諦める?いや、そもそも帰れるかも分からないんだった。
「何難しい顔してんだ?」
「あっ、利家…何でもないよ。」
「昼餉も出来てるし、美味しいもの食べれば悩みも無くなるよ!ほら、行こう。」
秀吉さんと利家と一緒に大広間へ足を運ぶ。そこで昼餉を終えやっと、稽古を付けてもらえることになった。本物の刀では流石に危ないので、木刀で。最初は秀吉さんと2人でやる予定だったけれど結局三成さんや利家、皆付いてくることに。所謂野次馬だ。