第4章 日常
「利家様、おはようございます!今日良い魚が取れたんですよ!」
「おっ、すげぇデカイな!また帰りに寄らせて貰うぜ!」
「利家様!うちの店も寄って行って下さいよー!」
「ははっ、そうだなぁ。折角だし茶屋寄ってくか?」
「行ってみたいです!」
皆から慕われているんだな。そう思うと何となくほっこりして頬を緩ませると不意に商人と目が合った。
「あれ、利家様。こちらの美人さんは良い人で…?」
「あ!?ち…違ぇよ!こいつは秀吉の…!」
こんなに必死で否定されるとちょっと傷付く。けれど利家さんの顔を見てみれば照れているだけだと直ぐ分かったから、私は何も言わなかった。
「ふふっ。」
「…なーに笑ってんだよ。お前も否定しろよ…。」
形容し難い表情を浮かべ乱暴に頭を搔く利家さんと茶屋に入り長椅子に座ると直ぐに御手洗のお団子とお茶が運ばれて来た。美味しそう!
「利家さん、皆から愛されてるんですね。」
「んなことねぇよ、町のヤツらが元気でやっていけんのは秀吉の政治のお陰だしな。それよりさぁ、お前半兵衛達には敬語辞めたんだろ?」
「あ、はい。普通に話して、って言われたので。」
「オレもあいつらと同じでいいよ、硬っ苦しいだろ?」
「そう仰るならお言葉に甘えさせて貰います!」
「おう!」
「……利家さん?利家…くん…?くん、は何か違うね…。」
「呼び捨てでいいぜ?」
話しつつ、団子を口に運ぶと丁度いい甘さともちもちの弾力に思わず感嘆の声が漏れる。戦国時代って砂糖とか、凄く貴重だった気がするんだけど…そこは異世界補正なのかなぁ。まさかお団子が食べられるとは思ってなかった。案外色んな調味料があるのかも。
「はー、美味かった!」
「ごちそうさまでした。」
お茶までしっかり飲み干し一息つく。…あ、利家の唇端にタレがついてる。ハンカチあったかな。短パンを漁ってみたけれど残念ながら入ってなかった。忘れて来てしまったみたい。
「利家、動かないでね。」
「うおっ、な…?」
付いていたタレを指先で掬い舐め取る。すると利家は顔を真っ赤にさせ思いっきり口元を腕で拭った。そ、そんなに恥ずかしかった…?
「お前な、男に軽々しくそんな事やるもんじゃねぇぞ…!」
「拭くもの忘れてきちゃったからつい。」
「っ〜…たく!行くぞ!」
「待って待って!」