第4章 日常
「…1匹とはいえ、よく撃退出来たな。」
「へぇー!人間で、しかも女なのにすげーじゃん!」
「逃げても捕まると思ってあの時は本当に必死だったんです。」
「それでも、すごい事ですよ。」
「あ、ありがとうございます…!」
三成さんに、褒められた。こんな素直に褒められると思っていなかったから嬉しい。
「午後手合わせするの楽しみにだなぁ。だけど、あんまり無茶はしない事!稽古はつけるけど、俺が居る時は極力戦わせないからね。」
「分かってるよ!」
それから朝餉を食べ終えると秀吉さん達は何やら軍議があるとの事で私は暇になってしまった。折角だし城下町をしっかり見てこようかな…。でもひとりで行くと怒られそうだし、また人狼に会ったらヤダなぁ。
結局庭の縁側へ座りぼんやり空を眺める。凄い昼寝日より。後ろ手を付き暖かな陽気に瞼を閉じる。
「見ィつけた!」
「うわっ!…利家さん?」
目を閉じてからしばらくして、突然聞こえた声に目を開くとそこには利家さんが立っていた。軍議が終わったのかな。
「秀吉から城下町に行くように頼まれてんだ。一緒に行くか?」
「いいんですか?お願いします!」
「よっしゃ!そうと決まったら行こうぜ!」
「はいっ!」
縁側から立ち上がり、利家さんの隣に並び歩き始める。昨日は殆ど良く見ずに去ってしまったからのんびり見れるのは嬉しい。
「軍議はなんの話しだったんですか?」
「あー…お前、人狼に会ったんだろ?どこの軍か突き止めるってのと、どの程度の事が知れ渡ってんのか調査する事になったんだよ。」
「そうなんですね…。」
「後は最近落ち武者崩れの集団が豊臣領を襲ってるらしくてよー。そいつらを捕まえる為の策を練ってた。」
「策は決まったんですか?」
「んー、まだだな。明日もっかい朝話し合う!今日はその下準備って事で今から聞き込みに行くんだよ。場所も特定出来てねぇし。」
「そっか…私も出来る限りお手伝いしますね!」
「おう、ありがとな!」
利家さんと話すのは話題が尽きなかった。三成さんはどんな人だとか、官兵衛さんは普段何してるだとか、軍のみんなのことを良く教えてくれる。その時の彼の表情がとても楽しそうで、私も自然と笑顔になる。
城下町に着くと相変わらず賑わっており通りゆく人達が気さくに利家さんに声を掛けていた。