第4章 日常
「その話もう何回も断ってますよね?いい加減諦めてくれませんか?」
「俺も何回も言ってるでしょ?欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れるってね。」
…もう!本当にこの話に関しては埒が明かない!いっそこれからは聞き流すことにしよう!ため息1つ吐きこぼすと半兵衛くんが私の目の前にしゃがみ込んだ。そしてズボンの裾を軽く持ち上げる。
「う〜ん…少し長いねぇ。切っちゃう?」
「えっ!でも半兵衛くんのだから…私、最初に履いてたズボン代わりに履くよ!」
「ずぼん…?」
「…あ、この…洋袴、みたいな…!」
「そっか、分かった!じゃあもう1回ちゃんの部屋に寄って、庭に行こう!」
「うん、もたついてごめんね…。」
「大丈夫だよ〜、官兵衛も待ってる間のんびり本を読んでると思うし!」
官兵衛さん…寡黙で何考えているか分からないからちょっと緊張するなぁ。けれど悪い人では無さそうだったから。厳しい人だったらどうしよう。
ズボンを軽く引きずりつつ自分の部屋に付くと先日綺麗に洗われたズボンに履き替える。着慣れたものは落ち着くなぁ。
今度こそ庭へ向かう途中、半兵衛くん、秀吉さんと他愛ない会話をぽつりぽつりと零した。
「ねぇ、俺にも半兵衛と同じように素のあんたを見せてよ。敬語じゃなくてさ。」
「秀吉さんにも、ですか?流石に一国の主にそれはちょっと…。」
「え〜?その主が良いって言ってるんだよ?」
「利家は秀吉様にも口調は荒いし大丈夫だよ。ね、秀吉様?」
「もちろん!むしろ俺より半兵衛の方がは心を許してるっていうのが悔しい!」
「はぁ…わかりました。」
「そこは分かった、でしょ?」
「…分かった!これでいい?」
「上出来。」
満足そうに頭を撫でられる。すっかり乱された髪を手ぐしで直しつつ庭に到着すると既に官兵衛さんが待っていて、分厚い本を手に持っていた。
「官兵衛、お待たせ〜。」
「お待たせしてすいません…!」
「いや…秀吉様もいらっしゃったんですか?」
「可愛いが怪我をしないかしっかり見ておきたいからね。」
「ふふっ、官兵衛責任重大だね〜。」
「…問題ない。早速始めるぞ。」
「よ、よろしくお願いします!」
初めて1人乗馬だ…!緊張する。すぐに馬に乗る事は無くまずは細かな説明を官兵衛さんはしてくれた。