第3章 厄魔
「私の血を使って下さい!」
「え…?」
「豊臣軍の為に、血を使って。その代わり私にも刀の使い方を教えて!秀吉さんが私を守ってくれるように、私も貴方を守りたい…!!結婚の話も保留にして下さい!」
この人は、昨日も今も。必ず私を守ってくれた。どんな不利な状況でも、安心させてくれた。そんな彼を私も守りたい。そう思ってしまった。
「…ぷっ、あっははは!参った!俺の未来のお嫁さんがこんなに勝気な子とは。」
「な…っ!私は本気で…!」
「うんうん、いいよ。分かった。けど忘れないで。一目惚れは嘘じゃないし、俺、欲しいものはどんな事をしても手に入れる主義なんだ。」
距離を詰めてきた秀吉さんの唇が耳に触れ、聞いたことのない低い声にざわりと心が震えた。片手が私の後頭部へ回され、耳から首筋へ唇が移る。
「秀吉さ…!」
「俺の予想していた結果とは少し違うけど…。これからも、ずっと俺のそばにいてよ。」
「…はい。よろしくお願いします。」
小さく頷くと先程とは違った場所に細い牙が首筋へ突き立てられる。痛みと共に先程味わったのと同じような感覚が身体を襲った。身体が、ゾクゾク震える。
「ん、……っはぁ…。きたきた…この感じ…!」
唇が離れると秀吉さんの姿が強い光とともに変わった。口角に残る血を舌でぺろりと舐め取り彼は化け物へ向かい言い放つ。
「運が悪かったね、厄魔共!今の俺は無敵だよ。」
それからはあっという間だった。軽い身のこなしで数え切れない程の厄魔…?とやらの化け物を斬り払っていく。怪我ひとつ無い模様だ。
全ての厄魔が消えた頃、秀吉さんの変化は解け三成さん達が遠くから駆けて来た。
「秀吉様!ご無事ですか!?」
「おっ、なんだも見つかったんだな!」
「三成!見ての通り、俺たちは無事だよ。」
「みてぇだな、こっちも全部終わった。町には被害も出てねえ。」
「町に被害って…?そもそもあの化け物はなんなんですか…?」
「あれは厄魔って言って急に現れては人間を襲う化け物なんだよ。最近は数が増えててさぁ。まさかそれが大量発生してるって場所にが居るとは思わなかったけど!」
「そ、そうだったんですか…。」
厄魔、か…。覚えておこう。秀吉さんが来てくれて本当に良かった。そう思って息をつくと秀吉さんに手を引かれる。