第2章 始まり
「みんなに聞いてほしい事があるんだ。」
「はい…改まってなんでしょうか?」
「えーっと、その前に一応確認。ねぇ、。みんなが助けに来る前に何があったか、話してもいいかな?…これの事。」
秀吉さんは私の首元をトン、と叩いた。吸血した時の事…かな。
「いいですよ。私も何が起きたのかわからなかったので。」
「ありがとう。まぁ、ダメって言われても話しちゃうんだけどね。みんなには知っておいて貰わないといけないし。」
「なんだよ、勿体ぶらねぇで早く話せって!」
「じゃあ、ここからは真面目にいくぞ。これは俺たちにとって大事な話だ。彼女の【血】の秘密について。」
秀吉さんは先程森で織田信長に会う前の事を話した。覚醒、とやらの事だ。聞いていた人達は皆目を丸くする。…それだけ凄いことだというのは容易に想像が出来た。
「覚醒って…本当かよ、それ!?」
「にわかには信じられませんが…。」
「あの、そもそも覚醒ってなんなんですか?」
「んーと、簡単に説明すると、月牙族本来の力に目覚めるって感じかな。」
「時代を重ねるにつれ、力は血脈の中に埋もれていっている。秀吉様の姿が変わったのなら、その力が目覚めたと考えるのが妥当だ。だが、そんな事が出来るなど…。」
簡単に言うとなんか強くなるし傷も治るって事で良いのだろうか。兎に角私の血に何か特別な力がある、というのは確からしい。この時代…?世界…?において利用価値は十分有りそう。しかし、余程その覚醒とやらが珍しいものなのか周りは戸惑っていた。そんな反応されると私も不安になる。
「まぁ、みんなは実際に見てないしね。でも俺は、彼女の血を飲んでその力を体感した。彼女は特別なんだ。それだけはわかって欲しい。」
「秀吉様が…そう仰られるなら。」
「ありがとう、三成。本当は俺たちだけの秘密にしておきたかったんだけどね。多分信長に勘づかれたと思う。」
「!それでは、彼女は…。」
「あぁ、分かってるよ。信長に命を狙われるだろうね。」
「……そうですか…。まだ気付かれていない可能性は無いんですか?」
「希望的観測は死に直結する。」
「あの人は自分の邪魔になるもんはどんな小さくても全力で潰しに来るぜ。」
「信長の事だから、戦場だけでなく、この城にも兵を忍び込ませてくるかもね…。」