第2章 始まり
味方が増えた事に少しだけ恐怖が和らぐと今度は織田信長の後からまた綺麗な顔立ちの人が現れた。あれは誰だろう。森蘭丸…はもっと幼いよね、多分。
「信長様。石田、前田だけではなく、竹中半兵衛、黒田官兵衛の両部隊が後方にて展開中との事。」
「なるほど…機を逃したか。」
「秀吉様!ひとまずここは我らが抑えます!今のうちにお退き下さい!」
「悔しいけど、今この状況でこれ以上やり合うのは得策じゃないし、仕方ないかな…。分かった!すまないお前達!ここは頼む!、掴まって!」
「はい!」
差し出された手を咄嗟に掴む。すぐさま走り出した秀吉さんに着いて走った。彼は振り返り、残った三成さんと利家さんに大きな声を掛ける。
「お前たちもちゃんと戻って来いよ!」
「おぅ!任せとけ!」
「気を付けて下さい!!」
私たちは利家さんたちに後を任せ、お城への帰路を急いだ。秀吉さんの馬に跨り城を目指す。残された三成さん、利家さんや半兵衛さん、官兵衛さん…その他豊臣軍の兵達が心配で堪らないが戦において何より総大将の命を刈り取られるわけにはいかないのだろう。振り向くことなく城へ向かい、無事辿り着く。
「俺はこのまま大広間で三成達を待つ。も着替えたら来てくれる?」
「わかりました。」
襖を閉めてその場に座り込む。やっと生きている心地がした。覚醒、がどうのとか秀吉さんが言っていたな…。覚醒って何?傷、治ってたって事は秀吉さん達にとってはいい事なのだろう。だとすると私は吸血鬼にとって超使い勝手の良い救急箱?これからも戦場を連れ回されるの…?
ぐるぐると纏まらない思考に頭を抱え、ゆっくりと着物に着替える。何が怖いって、実際の戦を見たら血が怖いだとか、グロテスクだとか言ってる暇すらない事だ。喚いてる暇が有るなら刀を奮わないと死ぬ。今回は秀吉さんが守ってくれたけど、次は…?
私も自分を守る術を手に入れないと。どうせ逃げられないのなら強くなろう。
自分でも賞賛してやりたい程ピシッと着物を着終えると秀吉さんに言われた通り大広間へ足を向けた。既に三成さんたちは戻ってきておりほっと息を着く。大きな怪我も無いみたい。
「お、来たねぇ。おいで。」
「失礼します。」
妙に上機嫌な秀吉さんに手招きされて隣に座る。三成さん達のは一斉に秀吉さんを見る中で彼は楽しげに口を開いた。