第2章 始まり
「…ほ、本当だ。吸血鬼って凄いですね…。」
もう私の頭はキャパオーバーだ。見せられた腕は確かに傷口すら無くなってる。綺麗に閉じてる。吸血鬼って凄い治癒力。確かにこれなら心配要らなかった。
「吸血鬼だから、って訳では無いんだけど……っと。」
「うわっ。」
再び秀吉さんが光り出す。耐えきれず目を閉じ、また開いた頃には見慣れた姿に戻っていた。…一体今のは何だったんだ。
「…あれじゃ量が足りないって事か。へぇ、なるほどね…。」
「…秀吉さん、何か知ってるんですか?」
「いたぞ、秀吉だ!!今度こそ逃がすな!」
私が聞こうとしたその時、すぐ近くから聞こえてきた声に身体が飛び上がる。折角やり過ごせたと思ったのに…!私と秀吉さんは再び織田軍に囲まれてしまった。けれど秀吉さんは余裕そうな笑顔で刀を手にする。
「…下がってて。」
「や、やっぱり私も…!」
「大丈夫!あんたのおかげで怪我も治ったし今度こそ、かっこいいところをみせてあげるよ。」
そう言うと秀吉さんは言葉通りあっという間に敵を切り伏せていった。凄い…!!命を掛けて戦っている人の動きは想像しているよりずっと速く鋭い。森という狭く不揃いな地を利用した戦い方。確かにこれは…かっこいい。これが総大将…!
「す、凄い…!!秀吉さんかっこいい!」
「ね?平気だったでしょ?」
「はい!守ってくれてありがとうございます。」
「おっと、面と向かってお礼を言われると照れるね。じゃあ頑張ったご褒美をお願いしてもいいかな?」
「…わ、私に出来ることなら…。」
「本当?それじゃあ…またあんたの血を舐めさせて欲しいな?」
「嫌です。」
「けちー!ご褒美くれるって言ったじゃん!はあ、折角頑張ったのになぁ…。」
ガックリと肩を落とす秀吉さん。血を舐めたいと言われて、ハイいいですよなんていう人、変人か変態だと思う。なんとも言い難い曖昧な笑みを返すと、不意に聞いたことのない冷たい声が辺りに響いた。
「確かに、今の戦いは中々のものだった。」
「ーーっ!下がって!」
一瞬にして張り詰める空気。秀吉さんは刀を抜き構える。その先に見据えていたのは…髪の長い男だった。とても綺麗な顔をしているのに何処か近寄り難い。冷たい目をした人。