第13章 自覚
幸村くんと向かった町は、まだ朝なのに沢山の人がいてとても賑やかだった。豊臣領とはまた全然違う雰囲気に、圧倒される気すらする。
「でも、そのせいかみんなやたら仲が良くて──」
「おや、幸村様じゃないですか。」
「あぁ、ほら……やっぱり来た。」
「どうなさったんですか、そんな美人を連れて。羨ましいですねぇ……おや、もしかして以前練り香水を買われたのは彼女の…」
「こ、こら、からかうな!彼女に迷惑だろう?」
慌てた様子で声を荒らげる幸村くんを尻目にニヤつく商人は、私に向き直った。香水の事を知っているのであれば彼は多分、小物屋さんの商人なのかな?
「おっと、これは失礼いたしました。ですがお嬢さん。幸村様は武勇にも優れ、人望も厚い方ですから、ぜひともよろしくお願いしますね。」
「ふふ、心得てます。とてもお世話になっていますから。」
「……と、とにかく、今日は姫神子様の情報を集めに来たんだ。それと、厄魔による被害状況もな。」
「厄魔のですかい?そうですねぇ、幸村様達も良く気にかけて下さってますし、この辺りまで迫って来る事はほとんどありませんよ。姫神子様の事については、分かりませんねぇ。」
「そうか…厄魔による被害が及んでいない事が分かっただけでも助かるよ、ありがとう!」
「とんでもない。ぜひまた、おふたりでいらしてくださいね。」
「ああ、それじゃあ。」
残念ながら、姫神子様の情報は得られず私達は再び歩き始めた。やっぱりそう簡単には見つからないよなぁ…。
「厄魔はこの辺りではあまり出ないみたいだね、やっぱり人の少ないところの方が出やすいのかな。」
「いや、そういうわけでもないんだよ。人が多く住む村でも、厄魔は襲って来るからね。油断は出来ないんだ。」
「そうなんだ…そもそも厄魔ってなんなんだろう。」
「確かに……」
「……おっ!幸村様が、女性を連れて遊びに来てる!」
2人で首を傾げていると、今度は先程より老いた男性が声を掛けて来た。揃って足を止めれば、幸村くんは複雑そうな顔で男を見る。
「お、お前までそうやって…。俺が女の子を連れているのが、そんなにおかしいか?」
「いいえ。おかしいだなんてとんでもない。ですが、珍しいことに違いはありませんので。」