第13章 自覚
「う……。」
「いやはや、それにしてもお目が高いお嬢さんですねぇ。」
「お目が高い?」
「えぇ、幸村様は間違いなく家族思いで家庭に熱心な旦那さんになりますからね。子育てだってきっと──」
「い、いったい、何の話だ!」
「ああ、そうだ幸村様。良かったらこのお団子、分け合って食べてください。……未来の奥様方と、どうぞ仲良く!」
「あっ、こら!言い逃げするな!おい!」
笹に包まれた団子を強引に幸村さんに手渡すと、どこか機嫌良さげに去って行く男の背に声を掛けるが振り向かずに行ってしまった。
それにしても、まるで友達のように接する人が多いんだな。仲がいいって言っていたのも頷ける。
「全く…ごめんな。嫌な思いさせて。」
「え?嫌じゃないよ。2人が言っている事も凄くわかるし。」
「分かる…?」
「幸村くんは優しいし、強いし、いい旦那さんになりそうだなって私も思うよ。」
「え……!あ、ありがとう…。」
幸村side
彼女の言葉で胸がじんわりと熱くなるのを感じる。きっと他意は無いんだって事はわかっているけど、褒められる事への喜びと、少しの期待が入り交じってしまう。
逸る心臓の音を隠そうと逸らした視線を、再び彼女に向けると綺麗な瞳と目が合った。そして、俺に向けてにっこり笑い掛けてくれる。その瞬間、まるで心臓を矢で打たれたかの如く強く痛んだ気がした。
…─ああ、そうか。俺はもしかして、彼女の事が……
「あ、幸村様!こちらにいらっしゃいましたか!」
「っ……あ、あぁ、どうしたんだ?そんなに慌てて。」
物思いに耽っていると、正面から見知った顔が駆け寄ってきた。彼は、本屋の店主だったな。
「小物屋の店主から聞きましたよ、姫神子様の事についてお調べになってるとか。」
「わざわざ俺を探しに来てくれたって事は…何か知っているのか?」
「私が直接何かを知っているという訳では無いのですが…実は、私が以前住んでいた領地の外れにある村の長老が昔のことにとても詳しいんですよ。古い時代の文字とかも読めるので、もしかしたら幸村様のお力になれるやもと思いまして。」
俺はと顔を合わせた。確か文字か古くて読めずにいた姫神子様について書かれている本が、宝物庫にあったな。それを解読して貰えるかもしれない。