第13章 自覚
「ふふ、そうだなぁ。戦をしていたのはもう何百年も前の事だから。」
「…それでも、戦はあったんだね。あ、着いたよ、ここだ!」
話しながら歩いていると、あっという間に畑に着いたらしい。畑は規則正しく一列に青々とした葉が空に向かって伸びている。これが大根の葉かな?他にも綺麗に耕されていてしっかりと手入れが行き渡っているのが私でも何となく分かった。
「前に沢山雨が降ったからね…少し滑りやすいから、気をつけて!」
「分かった……っわ!」
「おっと!」
言われた傍から足元がずるりと滑り体勢を崩す。すかさず少し前を歩いていた幸村くんの手が伸びて来て私の腕を掴み、引き寄せられた。自然と身体が抱かれる形となり、その距離の近さに驚きと共に少し恥ずかしく感じて顔を俯ける。
「ご、ごめん…思った以上に滑りやすくて…。」
「だっ、大丈夫!足、捻ったりはしてない?」
「平気だよ、ありがとう!」
ちらりと視線を持ち上げれば、どうやら照れ臭く感じていたのは私だけでは無かったようで彼の頬は僅かに赤く染まっているように見えた。
「…幸村くん、顔赤くなってる。可愛い。」
「な……それはもだろ!」
ちょっとからかうつもりで言ったら、幸村くんは少し頬をムッとさせて言い返して来る。それがおかしくて、楽しくてつい笑うと彼も頬を緩めた。
「ふふ、ごめんね。姫神子探しも有るし、やろっか。」
「それもそうだな、皆も頑張ってくれてるし、俺たちばかり遊んでもいられないからね。大根は結構深く埋まってて、力が要るんだ。こうやって、茎の根元を掴んで……よっ!!」
「わ、凄い!!大きいね!」
私から離れた幸村くんは、近くに生えていた大根の前に屈み、言葉通り茎を掴んで一気に引き抜いた。お店で売ってる位、太くて立派な大根が姿を現し思わず感嘆の声が漏れる。土を払い、それを籠に入れると今度はその隣に移動して手を差し伸ばされる。
「もやってみよう、こっちに来れる?」
「う、うん…!」
多分、また転ばない様に手を伸ばしてくれたのだろう。そのあまりに自然な優しさに心音が少し煩くなるのを感じながらも手を掴み、幸村くんの元まで足を進めた。
「ここを掴めばいいんだよね?」
「そうそう!それで、思いっきり引き上げるんだ。」