第13章 自覚
「、用意は出来た?」
「うん!お待たせ。」
翌日、約束通り幸村くんと城下町に向かう事になった私は部屋の前で彼と合流する。デートという名目上、秀吉さんから貰った簪を着けるのもどうかと思ったのでそれは身に付けず、見えにくい帯の後ろに差し込み、幸村くんから貰った練り香水を耳裏と手首に塗り付けた。それに気付いたのか、幸村くんは少し照れ臭そうに笑う。
「…ちゃんと使ってくれてるんだね、嬉しいよ!」
「こちらこそ、凄くいい匂いで気に入ってるよ。ありがとう!そういえば、幸村くんって自分の畑が有るんだよね?折角だから行ってみたいな。」
「勿論!丁度まだ収穫出来て無い大根もあるからさ、抜いてみる?」
「良いの?やってみたい!」
「それじゃあ籠も持って行こうか!」
他愛無い話をしながら、まずは蔵に向かい背負い籠を1つ持って城の外へと向かう。野菜の収穫かぁ、小さい頃に、さつまいも掘りとかやった事があったっけ。懐かしい。
「大根の他にも色々植えてるの?」
「そうだね、人参や葱、里芋なんかもあるよ。」
「色々育ててるんだ。総大将なのに畑仕事までするなんて凄いね。」
「そんなことないよ!それより、俺もの話を聞きたいな。この世界に来る前は、どんな生活をしていたんだ?」
久々にこの手の質問をされたな。私は思い出す様に顎に手をあて首を傾げた。…もうこの世界に来て結構経ったな。色んな事が起こりすぎて元の世界の記憶すら、薄れて来てしまいそうだ。というか、私一応就活生なんだよね。元の世界でも同じ様に時間が経ってたら、詰んでない…?そんな事を思うと何となく背筋がゾッと凍った様な気がした。
「…?どうしたの?もしかして、あまり聞かれたくなかった…?」
「い、いやいや!そんな事ないよ、大丈夫!私はまだ大学生だから学校……あ、ここでは寺院って言うのかな。寺院に通いながら、お兄ちゃんに剣道の稽古をつけてもらったり、友達と遊んで暮らしてたかなぁ。」
「もしかして、の世界では寺院に通う事は当たり前なのか?」
「そうだよ、6歳から18歳まではほとんどの人が通ってるの。」
「それは凄いな…想像もつかないよ。俺たちが暮らすこの世界より、ずっと栄えていて、平和な世界なんだろうな。」