第12章 決議
「どうしたの?」
「幸村くん、明日時間空いてたりしない?」
「うん、午後なら大丈夫だと思うけど…。」
「よかった!それじゃあ、町に連れてってくれないかな?幸村くんに案内して欲しいの。」
「えっ!?」
「雨の日に約束したでしょ?」
「あ…。」
思い出したのか幸村くんは顔を朱に染めて口元を隠した。そんな初心な反応を見せられるとこっちまでちょっと照れる。
「本当に俺でいいの…?総大将だし、誰よりも真田領を知ってる自信は有るけど、女の子を案内するのは初めてだし、才蔵とか兄ちゃんの方が……っ!」
視線を伏せる彼の鼻をキュッと摘んでやった。秀吉さんは強引な人だったけど、幸村くんは慎重な人だなぁ。かく言う私は秀吉さんの強引さがちょっと移ったのかもしれない。
「もう、女の子からの誘いはそう簡単に断るものじゃないよ!私は幸村くんがいいの。お願い出来る?」
「っ……あぁ、わかった!楽しみにしてて。」
「うん!」
鼻から手を離すと幸村くんは少し照れたように、けれど優しく笑ってくれた。
それから時間は経ち気が付けば陽はすっかりと落ちており、いつの間にか夜が訪れる。
「さて、どうにかだけど城の修繕は済んだな。みんな、お疲れ様。」
「はぁ〜、終わった!やっと飯だ、飯〜!」
「鎌ノ助も珍しく、よく頑張っていたな。フッ、俺が褒めてやろう。」
「もう僕、へとへとだよ…。すごく眠いし…。」
「疲れているところ悪いが、話し合いたいことがある。の事についてと、昨日の厄魔の件だ。みんな、夕飯の後大広間に残ってくれ。」
くたびれた脚で大広間へ向かい、みんなで雑談をしながら夕食を取る。ここでのご飯は野菜が本当に美味しい。そういえば、なんだかんだこの世界で口にしているものって元の世界と何ら変わりが無いや。
「さて……まずの事についてだ。話してくれるかい?」
「あっ…うん。えっと……薄々気付いてると思うんだけど、私はこの世界の人間じゃないの。」
信之に振られ私がこの世界へ来た事の経緯と、そのまま秀吉さんに拾われてお世話になっている事を彼らに話した。もちろん、帰りたいという事も。
「異世界、か…確かにってたまにオレ達の知らない言葉使うよな。」
「神牙の文字も読めないんだったね。」