第12章 決議
へらへらと笑う佐助くんに対して突然鎌ノ助くんが頭を抑えてしゃがみ込んだ。そんな彼に才蔵くんは驚きの声を上げる。
「ねぇ、僕、頭がすごく痛い。だから、頭撫でて欲しいなぁ。」
「ふふ、はいはい。こう?」
100%仮病という事は一目で分かったが、ちらりと覗き込むように上目遣いで見上げて来る鎌ノ助くんが可愛くてつい悪ノリしてしまう。彼に合わせてしゃがみ込み、フードの中へ手を入れて柔らかな髪を撫でた。
「…ふぁ。なでなで、気持ちいい…。」
「なっ、くそっ!だったら俺だって!!
あー、なんだか急に気分が悪くなってきたぞ?これは看病が必要だな。それも、美女の看病が。」
「……才蔵くん?」
「さぁ、おいで。俺の看病が出来る、またとない機会だぞ?」
「えぇ、私…美女じゃないし女中さん呼んでくる?」
「なぜそうなる!?」
「ねぇ、撫でるのなんでやめるの、なんでやめるの?」
看病待ちというか、ほぼハグ待ちみたいな形で両腕を拡げる才蔵くんに困惑して鎌ノ助くんの頭を撫でるのを止めると今度は下から袖を引っ張られる。あぁ、私に弟が居たとしたらこんな感じなのかなぁ。
収拾つかずに困っていると、今度は遠くから幸村くんが駆け付けてくれた。
「こ、こら!お前たち!何してるんだ、が困ってるだろ!ごめんな、3人を任せたばっかりに……。」
「ううん、良いんだけど…作業進んでないや…ごめんね。」
「……幸村だって、羨ましいだけなんじゃないの。」
「なっ……!そんな事………!」
ジト目で見上げる鎌ノ助くんの視線を追うと、幸村くんはちょっとだけ顔を赤くして首を横に振った。彼は本当に隠し事が下手というか、苦手らしい。
「幸村くんも後で頭撫でようか?」
「え!?いやっ、そういうつもりで来たんじゃなくて…!や、でも……。」
「……幸村、話に乗せられるなと言っただろう。」
あっ、やばい。幸村くんをちょっとからかってたら信之まで戻って来てしまった。しかもその表情はさっきの呆れから変わってちょっと怒っている。
「げ……の、信之様。」
「お前達に、作業を終わらせる気が無いのはよーく分かった。というわけで…今日の夕食は抜き、だな。」
「ちょっ……それだけは勘弁して下さい!」