第12章 決議
そう言って佐助くんは腕を組み何かを考え始める。けれどそれもあっという間で、直ぐにパッと顔を上げて忍術を唱えようとしているのか、人差し指と中指を立てて口元へ宛てた。
「だったらこんなのは、どうだ!?自己流忍法、旋風の術!!」
「ほう、竜巻で散らばった廃材を吹き飛ばすわけか。なかなかどうして、佐助にしては考えたほうだ……っておい!?何故俺の方に竜巻がやって来る!?」
突如何も無い所から現れた竜巻は石ころや木材、枝などを無差別に巻き込み吹き上げる。しかも悪いことにそれは制御が出来ておらず今までより更に周囲を散らかしながらあろう事か才蔵くんの方へと向かっていった。当の本人は首をかしげながら指で別の印を結んでいる。
「あれ?こうしてこうやって印を結んで……んー、ダメだ。言う事聞かねぇや、これ。まっ、初めて使う術だしな。失敗してもしょうがない、しょうがない。」
「えぇ!?さ、才蔵くん、大丈夫!?」
「くそっ……土遁、岩障壁!」
才蔵くんが地面へ手を付き忍術を唱えると今度は土が思いっきり盛り上がり才蔵くんへ向かっていた竜巻を打ち消した。この世界に来てから感覚狂ってきてるのかな…。まるで魔法みたいな事が目の前で起こってるはずなのにあんまり驚かなくなってきてしまった。
「おー、土遁で竜巻を散らしたのか。上手くやったなぁ。」
「こ、殺す気か!」
「おい、おまえ達。」
「「え?」」
不意に後ろから聞こえてきた声に2人は振り返る。そこに立っていたのは呆れた顔の信之だった。あれだけ騒いでいれば離れた場所に居ても聞こえるよね。
「なんなんだ、これは。何故修繕始める前より、散らかってるんだ!」
「あ……しまった。」
「違うのです、信之様。これは佐助が、安易に技を使って楽をしようとしたせいで……。」
「あっ、ずりぃ!違うんですよ、信之様!これは才蔵の、土遁の術のせいなんです!本当に!」
「……ふたりのせいだよ、結局。」
「とにかく!やる事はまだたくさんあるんだ。ちゃんと、手を動かしてくれ。」
「……はーい。」
信之に怒られてしょんぼりと耳を垂らし落ち込む2人。忍術は凄いけれど、今使うべきでは無かったようだ。上手くいってたら作業が進んだのかな?
そんな事を思ってぼんやりとしていたら、額に小さな痛みが走った。
「いたっ!」