第11章 籠城戦
むしろ時間の経過と共に幸村くん達は少しずつ押されてきてしまってる。後ろにも厄魔が居て退路も無い。もっと私に出来ること…城のすぐ側から見てるだけじゃなくて、私にしか出来ないこと。
「はぁ…はぁ…。くそ、厄魔が次から次にやって来るな。本当に、キリがねぇぞ…!」
「下品な厄魔を見るのも、そろそろ飽きてきたな。」
「みんな、ここが踏ん張りどころだ!きついかもしれないけど、俺たちが倒れたら真田領のみんなが…」
民を想って戦う彼らを見殺しにはしたくない。
草むらの影から飛び出し幸村くん達の元へと走った。刀を持った所で私に出来る事は殆ど無いだろう。かえって迷惑を掛けてしまう可能性の方が高い。でも、私の血を彼らに使ってもらう事は出来る。刀は何故か持っていると、不思議な勇気を私に与えてくれた。厄魔はそこらじゅうに居るが、怖くない。いつでも刀を抜く準備は出来ていたから。
「幸村くん!」
「え……!?なんでこんな所に居るんだ、出てきたら危ないだろ!?」
「ごめん、でも皆が戦ってるのに見てるだけなんて嫌なの。2人が私を助けてくれたように私も助けたい。私の血を使って。」
「だけど…。」
「……幸村、せっかく危ない思いをしてここまで来てくれたんだ。その心意気、買ってやろうぜ。」
「フッ…幸村が飲まないと言うなら、俺が飲ませて貰おう。」
「ダ……ダメだ!こ…ここは、総大将の俺がやる…!」
「こんな時ばっかり…。」
幸村くんは1度厄魔から離れ私の元へ駆けてきた。その間佐助くん達が必死に厄魔を抑えてくれている。
彼は戦いの疲れからか少し余裕の無い表情をして私の肩へ優しく手を添えた。
「い、痛くしたらごめん…でも、出来るだけ優しくするよう…その、頑張るから……!」
「…大丈夫、幸村くんの事信じてるから。」
緊張した面持ちの幸村くんは私の喉元へ顔を埋めた。直ぐに牙が喉に突き刺さりじわりとした痛みが身体全体に広がっていく。
「んっ……ん、はぁ……。」
血が吸い出される感覚にゾクゾクと背筋が震える。私は彼の背中へ緩く腕を回し服を握った。久々のこの感覚はやっぱり耐え難いほど身体から力を奪う。けれど、相手が幸村くんだからか恐怖心は無かった。
長く感じた吸血が終われば規則的に並んだ噛み跡をペロリと舐められる。
「……ぐあ!身体が、熱い……っ!!」