第11章 籠城戦
「迷惑だなんて思いは、とっくの昔に霧となって消えている。」
「…まぁ、声大きいんだし、いちばん総大将に向いてるって。」
「……もしかして、俺が総大将に選ばれた理由って声の大きさだけ?」
「そんな事ないさ。みんなが、お前を信頼している。その器の大きさと実力に惚れ込んでいるんだ。さぁ、ほら。兵士たちが待ってる。しっかり決めてこい。」
「…わかった。俺、やるよ!」
なんだろう、緊迫するべき場面の筈なのにみんなはいつも通りで安心する。それに、やっぱり家族みたいでいいな…。
幸村くんは兵士たちの前に出た。そして大きく息を吸い込み…
「……みんな、聞いてくれ!今回の戦いは、これまで以上に厳しいものになる!だけど、1匹たりとも討ちもらすな!ここで俺達が迎え撃ち、みんなの日常を、何がなんでも守り抜くぞ!」
「「「おおおおう!!」」」
幸村くんの一言に兵のやる気は一気に上がる。凄い熱気だ。私も城の中で呑気に祈っている事など出来ない。念の為刀を腰に携えて城の外へと出た。
「フッ。では、まずは俺からだ!先陣を切るのは、この霧隠才蔵!誰よりも華麗に、美しく!厄魔の群れへと……はぁああ!」
ボンッ、と才蔵くんの周りに煙が立った。煙が晴れた頃にはそこには誰も居ない。辺りを探すと、いつの間にか彼は厄魔達のど真ん中に移動している。
凄い、まるで手品みたいだ…!
「あぁ…なんて美しく、それでいて素晴らしい忍術…!」
「あ、あいつすげー術使ったな。でもよぉ…」
これには佐助くんも驚いている。それ程難しい忍術なのだろうか。それより、あんな場所に移動してしまって大丈夫なのだろうか。
「いきなり群れのど真ん中に移動してどうすんだよ!ひとりじゃ危ねぇだろ!」
「グルル……グオオオオオ!!」
「フッ…これもまた、俺に課せられた天からの試練。美しく乗り越える俺を、見せてやるとするか。」
「佐助、鎌ノ助!才蔵の援護に向かうぞ!兄ちゃん、城は頼んだよ!」
「「わかった!」」
「ああ、こちらは任せておけ!」
そう言って幸村くん、佐助くん、鎌ノ助くんは少し城から離れた場所へと向かって行く。残った信之さんは複数の兵と一緒に幸村くん達を無視して城の周りに集まって来た厄魔を退治していた。
それにしても、本当に数が多い気がする。倒しても倒しても全然減っている気がしない。