第2章 始まり
「どうしたの?じっと戦いを見ているようだけど。」
「あ、いえ…。本物の戦を見るのが初めてだったので…。」
この強い非現実感が異世界に来てしまったことをまざまざと自覚させられる。
「そういえばは全然【神牙】について知らないみたいだし、いろいろと教えてあげるよ。今全部説明するのはちょっと難しいけど。」
「お願いします。」
「まずはこの神牙にとって重要な種族の話をしてあげるね。この神牙には人間以外に特別な力を持った種族がいるんだ。まとめて【月牙族】っていったりもするけど…。」
「は、はぁ…。」
「様々な種族の武将達が兵を挙げて、それぞれがいろんな理由で神牙を統一しようと戦っている。」
「待って下さい。人間以外の種族って何がいるんですか?」
「人狼とか、吸血鬼とか?」
人狼って、あのよくあるトークゲームの人狼?人を食べるやつ…?吸血鬼はきっとそのままの意味だよね。
「…秀吉さんも耳が尖ってますよね。豊臣軍は吸血鬼なんですか?」
「んー、まぁ、そういうこと。」
なら、イマリが言っていた事は本当だったんだ。それにしても今は昼だ。それでも秀吉さん達は悠々と外に出ている。人間と違って見えるところなんて耳くらいしか無い。…もしかして犬歯も尖ってる?少なからず私が想像してる吸血鬼とは若干違いがあるのかもしれない。
「数ある陣営の中でも、今戦っている織田信長の軍は、冷酷無比でとてつもなく強い。だからを見つけたのが織田軍だったら、敵と疑われて殺されてたかも…。」
「…そうですか…。」
そこは史実通りというか、もしかして武将一人一人は私の知っている歴史の中の人物と差異は無いのかも。人間じゃないというだけで。
「見つけたのが、俺の軍で良かったね。」
言っていることは物騒だが秀吉さんはにこにこと笑っていた。そんな彼に掌をそっとすくい取られる。自然とそこへ視線落とせば包まれた手はゆっくりと持ち上げられ、指先にそっと唇が触れた。
「さっきも約束したけど、もしもの事があったとしても絶対にを守るよ。」
そう言って不敵に口角を上げた秀吉さんは腰にある刀を抜いた。後に人の気配がする。けれど下手に動かない方がいい気がして固まっていると、取られていた手を強引に秀吉さんに引かれ身体が前につんのめる。