第2章 始まり
「せっかく似合ってるのに?残念だな〜。」
「兎に角着替えます!」
「分かったよ、利家達は先に行ってて。俺はが着替え終わったら行くから!」
「おう!早く来いよ。」
「また後でね〜。」
ひらひらと手を振る半兵衛さんに手を振り返す。後から大広間を後にして秀吉さんに連れられながら自室だと言われた場所へ戻った。
「俺は廊下で待ってるから着替えたら出てきて。あんまり遅かったら覗いちゃうよ?」
「辞めて下さい。ちゃんと着替えますよ。」
ピシャリと襖を締める。…どうやらイマリはどこかへ行ってしまったらしい。私は泥に塗れた私服を軽く払い着たばかりの着物を脱ぎ再び、シャツと短パンを身にまとった。汚れた服を着直すのってなんか凄い嫌だな…。けれどそうも言っていられない。脱いだ着物を綺麗にたたみ直し襖を開く。
「この戦が終わったら、その着物も洗おうか。」
「そうさせて頂けると有難いです。」
「何があっても俺たちが守るから。俺からは絶対離れないでね。」
「…わかりました。」
「よし、それじゃあ出陣するよ!」
本当に行くのか、またあの戦地に…。次人が斬られてる所なんて見てしまったら吐く気がする。映像じゃない、本物の血。嫌だな。
薄暗い気持ちになるも秀吉さん達には全く伝わらない。多分これまでの生き方の違いなのだから仕方ないと思う。私はあんな危ない場所で生きてきてはいないから…。
それからは城に来た時と同じように秀吉さんの馬に乗せられて戦地へと向かった。本陣に到着すると、遠くで利家さんや豊臣軍の人達が隊列を組んでいる。総大将はとりあえずここから動かないみたい。
「おっしゃあ!一番槍はオレが貰ったー!てめぇら、行くぞぉおおお!」
「「おおーーっ!!」」
大きな雄叫びと共に利家さん達が本陣から離れて行く。やる気満々だな。
「利家の部隊が敵陣にくい込んだな。半兵衛、準備はいいか?」
「わかってるよ官兵衛!よーしみんな!官兵衛の部隊と一緒に攻めるよー!!」
「第二陣、すぐに隊列を組め!敵を休ませぬように前線に兵を送り続けろ!」
鋭い声に兵達が一斉に動き出す。戦に関わっていない私でも味わったことのない緊張が走る。ドラマや映画じゃない。これが生の戦なんだ。必ずここで、誰かしらが死ぬ。そう思うと無意識に身体がふるりと震えた。