第11章 籠城戦
「いいよ、そんなこと。それよりちゃんと休まないとダメだよ!」
「はは、分かっているんだけどつい仕事を優先してしまうんだよ。」
「睡眠不足じゃ作業効率も落ちるでしょ?本末転倒!また眠そうにしてたら頭撫でて無理矢理にでも寝かせるからね。」
「あぁ…やけに気持ち良く眠れたと思った。」
「撫でられるの好きなの?」
「いや…。」
小さく首を横に振った信之は、徐に私へ手を伸ばし男らしい骨張った指でそっと頬を撫でた。何事かと目を見張ると彼は小さく唇を開く。
「に触れられると、安心するらしい。」
そう言って瞳を細め、優しく笑う。その仕草に心臓が大きく高鳴る。私は思わず1歩後退りその場で立ち上がった。
「そ…そうかな!?ゆっくり眠れたなら良かった!幸村くんが相談したいことがあるって言ってたから、呼んでくるね!」
まくし立てるように言って、私はそのまま信之の部屋を飛び出た。あんな優しい声と表情でそんな事言われてドキドキしない女の子なんて居る…!?最初は、ただ優しそうなお兄ちゃんだなって思ってたけれど、アレを素でやってるならとんだ天然タラシだよ…!
そのままの足で幸村くんの部屋へ向かい、信之が起きた事を伝えると調度出来上がった昼餉を大広間で取り、朝約束した通り城の入口で佐助さん達と合流した。
「ごめんなさい、お待たせしました!」
「おー!良いって、それじゃあ行くか!!」
「折角だから、城下を少し歩こう。俺が華麗に案内してみせよう!」
「おい才蔵!この子はオレが最初に誘ったんだぞ!」
「ふん、関係ないな。それにこの真田領について知ってもらうには城下を見てもらう方が良いだろう。」
「もー、喧嘩しないで下さい!」
「それ!!」
「え?」
突然、佐助さんにビシッと指をさされた。何が、それ!なのか全然分からず私は首を傾げる。
「幸村には敬語辞めたんだろ?オレ達にも敬語辞めて話してくれよー。」
「そうだな、1人だけ敬語抜き、なんて逆に違和感だろう?」
…なるほど、それで急に大声を上げたのか。
「…うん、わかった!よろしくね、佐助くん、才蔵くん!」
「へへっ、こちらこそ!」
「幸村に抜け駆けされるのは腹立たしいからな。これで同じだ。」