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夢現【戦刻ナイトブラッド】

第11章 籠城戦


強請るような、寝惚けた声に不覚にもキュンと来てしまった。普段しっかりしているイメージがあるからこそ、このギャップは狡いと思う。
私は隣へ座り直し再び彼の柔らかい髪を梳くように頭を撫でた。

「良いよ。ゆっくり休んで。」

「ん…ありがとう。」

力の抜けた笑みを浮かべた信之はそのまま瞼を降ろした。頭を撫で続け程なくして規則正しい寝息が聴こえてくる。信之はここの皆のお兄ちゃんって感じだし色々大変なんだろうな。ちゃんと息抜きも出来ればいいんだけど。

「兄ちゃん、入るよ……あれ、?」

「あ、幸村くん。」

襖を開いた幸村くんは私達を見るなりきょとんと目を丸くした後、少しだけ困ったように眉を下げた。

「ええっと…もしかして邪魔した…?」

「そんな事ないよ。どうしたの?」

「少し相談したいことがあって来たんだけど…そうか、最近兄ちゃん徹夜続きだったもんな。」

「そうみたい、さっきまで手伝ってたんだけどちょっと書庫に行った間に寝ちゃったみたいで。もう少しだけ寝かせてあげよう?」

「そうだね。…君はここに残るの?」

「うーん…うん。起きるまではここに居る。」

「そっか。じゃあ兄ちゃんが起きたら教えてくれる?」

「わかった!」

「ありがとう!」

それだけ残し、幸村くんは部屋を出ていってしまった。残された私は再び信之の頭をゆっくりと撫でる。…寝る時も耳は立ってるんだなぁ。
暫く経って、何となく眠っている彼へ顔を寄せマジマジと見てみる。…まつげ長いし、肌も綺麗。本当にこの世界の男達は整った顔をしている。

「寝てると可愛い。」

普段のキリッとした表情では無く気の抜けた寝顔はいつもより幼く見えた。私と同じ位の歳に見えるのに、しっかりしてて凄い人だと思う。武の道も嗜んでたって言ってたし…どれだけ強いのか気になる。見てみたいな、鍛錬してる所とか。
そんな事を考えていたら、彼の瞼がゆっくりと持ち上がった。顔を覗き込んでいた私は必然的に目が合う。

「おはよう、信之。」

「ふぁ……あれ…俺は眠ってたのか…?」

「気持ち良さそうに寝てたよ。」

「そうか…すまないね、仕事を手伝ってもらっていたのに。」

身体を起こした信之は小さく欠伸を噛み殺した。寝る前よりちょっと、顔色も良くなった気がする。
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