第11章 籠城戦
「少し高い位置にあったりもするから、無理はしないで分かるものだけ頼むよ。足もまだ治りかけだろうしな。」
「大丈夫。もう全然痛くないし、任せて!」
紙を受け取り襖を開いて廊下へ出る。…なんか緊張したなぁ。受け取った紙を広げてまじまじと文字を見てみる。…うーん、やっぱり読めない。なんて書いてあるんだろ。法則性とか有るのかなぁ。
蔵に着くと早速ずらりと並ぶ本棚に視線を向ける。背表紙に何も書いていないから1冊ずつ探すのは割と骨が折れるな。
「うーん…違うなぁ。」
…あれ、思った以上に見つからないぞ。たった3冊なのにこれじゃあいつまで経っても見つからない…!
「あれ、も探し物…?」
「あ、鎌ノ助さん!」
後から声がして振り返ると、鎌ノ助さんがひょっこりと覗き込んできた。その目はいつに無く眠そうだ。
「何探してるの?」
「この紙に書いてある本を探してるんだけど全然見つからなくて…。鎌ノ助さんもお仕事ですか?」
「うん、溜め込んでたから今日やってる。終わったら午後寝れるし…ふぁぁ。」
大欠伸を零した鎌ノ助さんは私の手の中にあるメモをすっと取り上げた。今日は一段と眠そうだし、昨日からもしかして頑張ってるのかな。
「あぁ、これならあっちの棚に有るよ。2つ目はここの1番上。最後のは…あ、僕が持ってる。」
「本当?ありがとうございます!」
「手伝おうか?」
「いえ、鎌ノ助さんも仕事が有りますし1人で頑張ります!」
「ん、じゃあ後で本持ってくるよ。」
「はい!」
鎌ノ助さんの言う通り棚を探すと余り時間も掛からず見つける事が出来た。探してる最中に彼は戻って来て、3冊揃った所で信之の部屋へと戻る。
「信之、入るよ?」
外から声を掛けてみたが、返事が無い。…いないのかな?襖に手を掛けそーっと開いてみる。
するとそこには机に突っ伏してすやすやと寝息を立てて眠る信之が居た。…疲れてたんだね。毎日遅くまで仕事していたみたいだし。
私は静かに部屋に入り本を近くに置いて隣に座った。
「毎日お疲れ様。」
柔らかそうな髪へ手を乗せ優しく撫でる。起こさない様に、このままそっとしておこう。ひとしきり撫でてから立ち上がろうとした時不意に手首を掴まれた。驚いて信之を見ると、眠たげな瞳で見上げてくる。
「…信之?」
「…もう少し、撫でて欲しい。」