第2章 始まり
「三成さん、利家さん、よろしくお願いします。」
「こっちの身体が弱そうな白いのが竹中半兵衛でその隣にいる無表情で黒いのが黒田官兵衛ね。」
「え〜、秀吉様、その紹介ひどい〜!あっ、よろしくね!可愛い女の子が来てくれて嬉しい!」
「………。」
半兵衛さんの着物はひらひらしててまるで女の子みたいだ。そもそも半兵衛さんが可愛い。官兵衛さんは無言のまま私を見ている。多分このふたりは軍師かな。
「半兵衛さんと官兵衛さんもよろしくお願いしますね。」
「まぁ、こんな感じで、結構賑やかでしょ?」
「そ、そうですね…。」
賑やかというか、個性派集団というか。悪い人達では無さそうだけど。私はここでどう振る舞うのが最善だろう。とりあえず猫被っておこう。
「じゃあ、行こうか。」
「軍議は別の場所でやるんですか?」
「あぁ、それはもう終わっちゃったよ。」
「そうそう。君を待ってる間にぽんぽんぽ〜んって感じにね!これから戦なんだ〜。」
「い、戦!?さっきも戦ってたのに!?…ですか!?」
「おうよ、織田軍との決着がまだついてねえからな!」
「そういうこと!さ、一緒に合戦場まで行くよー。」
にっこりと笑った秀吉さんに手を取られ立ち上がる。私は慌てて首を横に振った。こんな綺麗な着物で戦場に行くなんて死にに行くようなものだと思う、動きづらい事この上ない。
「待って下さい!何で私まで…!」
「え〜?だって戦場って男だらけでむさ苦しくて嫌なんだよね〜。が一緒に来てくれたら華やかになること間違いなし!ね、いい考えでしょ?」
そんな理由で戦場に女を連れ込むの…!?この人正気!?助けを求めようと利家さん達に顔を向けるとカラッとした笑顔を向けられてしまった。
「秀吉は、面白いことを思いついたらすぐ行動に移しちまうからなぁ。」
「戸惑うのは初めだけだ。秀吉様の思いつきにも、じきに慣れる。」
「思いつきなどと…。秀吉様の事です。何かお考えがあってのことに決まっています。」
「ふふっ。この軍に居る限りもう平穏な日常は諦めた方がいいよ〜。」
どうやら助け舟も出ないらしい。私は大きな溜息を吐きこぼし、繋いでいた手を離す。
「…わかりました。それならせめて着替えさせて下さい。こんな綺麗な着物汚したくありませんし、動きにくいです。」