第10章 雨
「それより、明日どうするの?雨酷いけど、僕達も姫神子を探さないと他の軍に遅れを取るよ。」
「そうだな。俺達もそろそろ動かねばならない。真田領だけでは情報収集には不十分かもしれないな。」
ちらりと鎌ノ助さんへ視線を送ると小さく笑ってくれた。もしかして、あまり触れてほしくない話題だと察して助けてくれたのかもしれない。優しい子だな。
「も足が治ったら一緒に姫神子探そうぜ!」
「え?いいんですか?」
「俺達は構わないよ。豊臣への恩を返す以外に君にとって大事な理由が有るのだろう?」
「…信之さんにはお見通しですね。その通りです。私自身の為にも姫神子様を探さないとならないんです。」
これはもう、隠し通すのは無理だな。適当なタイミングを見てこの人達にも伝えよう。異世界から来たという事を。
それからすぐに、再び襖に人影が浮かぶ。
「、入ってもいい?」
「幸村さん!どうぞ。」
静かに開かれた襖。中に多人数で集まっていた事に驚いたのか彼は少しだけ目を丸くさせた。そして直ぐに頬を綻ばせる。
「なんだ、皆ここに居たのか!やけに静かだから何処にいるのかと思ったよ。」
「そう言う幸村も彼女の顔を見たくて来たのでは無いのか?」
「違…!才蔵!余計な事は言わなくていいだろ!」
「幸村さん…そんなに否定しなくても…。」
「あ、ごめん!悪い意味じゃなくて…。」
少しだけ困らせてみたくて肩を落としてみると幸村さんは困ったような顔で慌てて首を横に振った。コロコロ表情が変わる人だな。
彼も部屋に入ると、輪の中へと加わる。いよいよみんな揃ってしまった。
「足、見せて。包帯巻き直すから。」
「はい、いつもありがとうございます。」
「幸村が巻いてたのか?血、舐めた?」
「舐めてない!」
「えー!勿体ねえ!」
「彼女の許可無く吸血するわけないだろ…!」
「でも、すっごく甘い匂いするよね。膝枕してもらった時、いい匂いだった。」
「鎌ノ助お前…怪我人相手に膝枕を頼んだのか…。」
「あ、いいんです信之さん。怪我がない方に乗せてくれたので。」
幸村さんの手が手際よく包帯を取り新しいものに代えてくれる。随分傷口も塞がってきたし無理をしなければ血が滲むことも少なくなってきた。もう数日もすれば動けるかな。