第10章 雨
「そうなんですね。姫神子ってどんな人なんだろう。」
「気になるよな!オレらも探してるところだし!」
「やっぱり探しているんですか?」
「この乱世を終わらせるためには姫神子の血が必要だからな。どの軍も血眼だろう。」
「はどうして姫神子を探してるの?」
ギク、と肩が跳ねた。確かに武将でもない私が姫神子を探してるとなると不思議だよね。3人の視線が一気に集まる。…どうしたものか。答えに迷っていると助け舟かの様にまた襖が開いた。
「なんだお前達、ここに居たのか。」
「信之様!」
「信之さん、こんにちは。」
「あぁ、調子はどうだ?」
「体調はバッチリですし、足も順調です!」
「それは良かった。」
そう言って笑う姿は少し幸村さんにも似ていた。信之さんはそのまま部屋へ入ると襖を閉める。
「賑やかな声が聞こえてきたからね。休憩がてら顔を見に来たんだ。」
「いつの間にか大所帯になってました。信之さんもお疲れ様です。佐助さんが沢山お団子持ってきてくれたんです。一緒にどうですか?」
「あぁ、頂こう。」
お茶と団子を囲って4人で座る。なんだかほのぼのしていていいな、こういうの。すごく平和だ。それにここの人達はなんだか家族みたいで仲が良い。豊臣とはまた違った空気だ。
「で、何の話をしていたんだい?」
「うっ…!」
「おいおい、大丈夫か?お茶飲め!」
「あ、ありがとう…。」
再び話題が戻って来てしまい思わず喉に団子が詰まりかけた所佐助さんがさっとお茶を差出してくれた。それを少しだけ啜り飲むと、皆の視線は一斉に私へと向けられる。ど、どうしよう…。
「私が姫神子様を探しているのは……ひ、秀吉さんが探してるから。お世話になってる人達の恩返しになればと思って。」
「…本当に?」
じっと信之さんの視線が突き刺さる。うぅ、本当の事を言った方が良いのだろうか…。信じてもらえるかどうかも分からないのに。
「す、すみません…。他にも理由は有るんですけど、言えません。でも決して皆さんやこの世界の人達に迷惑掛ける事ではないので。」
「ふむ、この世界、か…。」
…やばい、口が滑った。私が何気なくポロリと零した言葉は才蔵さんに拾われる。迂闊だった、もっと考えながら話さないと直ぐにボロが出てしまう。気を引き締めないと。