第22章 ホロウバスティオン 後編
『ハートレスっ!!!』
暗闇に口からでた私の声
ハートレスの声は聞こえなくなり私の身体に力が注がれているのがわかる…
あの子は消えた、私の為に全ての闇の力を注いで消滅してしまったんだ
何故、何故そこまで私の為に…
【それはお前のことを大切に思っていたからじゃないか?】
後ろを振り向けば以前にも会った茶髪の男の人がそこにいた
男は私をじっと、瞳に光を宿し力強く見つめていた
『あの子が、私を大切に?』
【俺にはそう見えた】
『でも…私はあの子に消えて欲しくはなかったんです!
いつも傍にいてくれました…とても心が素直で、共感できて…
初めて、自分のほうからこの子なら友達になれると思っていたんです…
消えるなんて、嫌だった!』
私は叫ぶように想いを彼にぶつけ流れない涙に悔しく思っていると肩に大きな手が置かれ、顔を上げれば男は軽く首を横に振った
【それはあのハートレスも同じことだ
お前に消えて欲しくないから自らを犠牲にお前を生きさせた
大切だったから、友達とおもっていたから犠牲になったんだ
ハートレスの気持ちは…俺にもわかる
…俺も、そうだったから】
『っなんなんですか、貴方は!
…何故私の前に現れるんです?
貴方は一体、誰なんですか?!
記憶を消したなら教えてください、何故私は記憶を消そうといったんですか!!』
彼の服を握りながら乞うように訴える私に彼は開きかけた口を閉じ悔しそうに顔を歪めて私の身体を抱いた
【思い出してはダメだ
お前は、今が一番幸せで安全なんだ…これ以上記憶が戻れば
お前はまた運命を繰り返すことになるっ…!!】
『っ!どういう…』
【いいか?ノラ
これ以上記憶を思い出せばお前は再び使命を背負う運命になる…
…過去を振り替えるな、今を、未来を大切にしろ】
『待って!』
【もう…お前の心にはいれないようだ、すまないノラ】
"ゼアノートに気を付けろ"
離れていく彼に私は首を横に振り、最後の指先を名残惜しく手を伸ばし名を呼んだ