第10章 アグラバー 後編
強い闇の力を感じマレフィセントは急ぎ足で発信源へと向かった
そこにはあのキーブレードの勇者が倒れているではないか…
なんと倒すには好都合…しかしマレフィセントの視線は闇の残骸だった
誰だ…ここまで強い闇の匂いを残す者は?
闇の力の後を追い、人影のないアグラバーの市街地へと踏み込めば遠くで少女の姿があった
ジャファーから何も聞かされていない見知らぬ人の姿…
その少女の手には形は違えどキーブレードを手にもっていた
キーブレード使いだと?
あのソラという少年だけがキーブレード使いだけではなかったのか…
これは面白い…
ふらりと少女が倒れそうになる
それさえ手をさしのべるつもりはなくただ倒れる瞬間をみていようと物陰から見つめていれば、少女の背後から闇の化身…他のハートレスとは桁違いな強さをもつ母体の姿をしたハートレスが現れ彼女を支えたのだ
ハートレスがキーブレード使いを助けるだと?
あの娘は一体何者なのだ?
ハートレスに抱えられている苦しそうな少女の表情をみてマレフィセントは目を逸らせずにいた…
「何故…あの者がここに…」
呟いた三文字は空気に流されて音として言葉にならずマレフィセントはただ彼女の消える瞬間までその場を立ち尽くしていた
杖を強く握り眉間に皺をよせ目を瞑る
僅かにのこる遠い昔の記憶…そして記憶のなかの暖かな視線
自分がマレフィセントと名乗る前の遠い記憶
そして闇の魔女として潜在している欲望の元凶…
マレフィセントは笑みを浮かべた…
「闇の王よ…お前さんはここにいたのか」
偶然の賜物にマレフィセントは高笑いをしその場を去っていった