第9章 アグラバー 前編
急に顔をガラッと変えた髭の男ジャファーは私の腰を引き町の中心ともいえる宮殿へと私を連れてきた
『急に態度が変わったように見えますが?』
「言っているだろう?人違いをしてしまったと…無礼を働いた。なぁイアーゴ?」
「へ!?あ、あぁ…アラジンの奴だと勘違いを!ほら髪も黒いし!?」
『アラジン…って男性の名前ですよね?』
「へ!?あーっえーっと…」
「…もう黙れ阿呆鳥め」
宮殿の中へ連れていかれて部屋の脇に立っているのは兵ではなくお腹の大きなハートレス
…この世界の人間はこの男以外みていない
そういえば…先程あのイアーゴという赤い鳥が住人を全て捕らえたと言っていた
それに【ジャスミン姫】という人物を探しているのか?
…この男一体何を企んでいる
「このアグラバーには何をしに訪れたのだ?」
差し出されたお茶に私は手をつけずにいれば優雅に自分のを飲みだした髭の男
『…人を探しにきました』
「ほぉどんな者か?ワシが知っている人物かもしれん」
『友人です。ソラとリク…そしてカイリという女の子です』
「リク、か。知っているぞ」
『っ!リクを知っているんですか!?』
テーブルを叩くように身を乗り出せばティーカップが激しく揺れる
私の様子にジャファーは目を光らせて杖を優雅に眺めては余裕をみせつける
「実は…お前に手伝って欲しいことがある」
ガチャンと閉められた後ろの扉
真っ暗な視界に灯火の淡い光が僅かに視界を良好にしてくれる
そして視線先…髭の男ジャファーが妖しい笑みでこちらをみて頬杖をついた
「ワシは今、魔法のランプとジャスミン姫を探している」
『…私は』
「お前はリクの居場所を知りたいといったな?
…リクは町の住人と一緒に牢に閉じ込めている」
『っ!!』
リクが…囚われている!?
「そんなっ…リクには手を出さないでください!」
私は無礼ながらテーブルの上に立ちキーブレードの先をジャファーに向けた
恐れ知らずかジャファーは何か確信めいて笑みを絶やさない
「ならばワシに従え…でなければ、わかるな?」