第4章 何か。
さぁさぁ。と、背中を押され、半ば強引に外に出される。
「お、おいまふ……!」
グイグイ押すお兄ちゃんにそらるさんが焦った様子で声をかけるが、これまた何故か焦った様子のお兄ちゃんには聞こえていないようだ。
パタン。
閉め切られた玄関の扉を前に立ち尽くす。
……。こんなに急に出されてもどこに行けば良いの……?
とにかくここにはいられないと心を決めて、とりあえず駅に向かう。
「待って待って!」
ふいに後ろから声が聞こえた。
振り返ると走ってくる歌詞太郎さんの姿が。
「ど、どうしたんですか?お兄ちゃんと遊ぶんじゃ……」
「あぁ。あれはえっと……。僕はとりあえず、えっと、優香ちゃんと遊ぼかなって!」
ニコッと笑いかけてくる歌詞太郎さん。
追い出された私を不憫に思ったのだろうか。
お兄ちゃんと遊ぶために家に来たはずなのに……。
でも、そのやさしさに甘えようかな。
「ありがとうございます。急に追い出されちゃったので、どこかに行くにしても困っていたんです」
「そうだよね……」
頭をかきながら、困ったように笑う。
「どこにいこうか」
「えっと、とりあえず駅に行こうかと思ってて」
「そっかそっか!駅周辺何でもあるもんね。行こう!」
慣れた手つきで私の手を握り、そのまま駅に向かって歩き出す。
そらるさんも、天月さんも、歌詞太郎さんも、お兄ちゃんと幼馴染で、私は小さいときからよく遊んでもらっていた。
お兄ちゃんが大好きでどこにでもくっついていっていたから、皆さんとも距離が近くなるのは必然だった。
ずっと、よくこうして手を握ってもらって歩いていた。
それはいくつになっても変わらなかった。
私を先導するように、少し早いペースで歌詞太郎さんは歩いていく。
しかし、決して私の歩幅を無視する速さでもない。
優しいなぁ……。
「はい!到着~」
駅の近くまで来ると振り返り私に笑いかける。
「どこがいいかなぁ」
あちらこちらに建っている多種多様なお店をキョロキョロと見渡していると、一軒、目に留まる。
「あ。あそこがいい」
「お。いいよ~」
にこにこしながら歌詞太郎さんはまた私の手を引く。
入ったところは、ゲームセンター。