第5章 日常
「んん……。うわっ!」
朝、目を覚ますとお兄ちゃんの顔が目の前にあった。
ビックリして起き上がると、私含めみんなリビングの床で雑魚寝していた。
昨日はみんなで騒ぐだけ騒いで、疲れ果てて眠ってしまったんだった。
みんな、よく寝てるなぁ。
「ああぁ!!!」
「どうした!?」
私の叫び声にそらるが真っ先に反応する。
「が、学校……遅刻……」
「あ……」
深夜まで騒いでいたせいで、今はすっかり太陽が真上……。
高校三年生で寝坊とは…。恥ずかしい。
私とそらるさんがオドオドしていると、寝ていたみんながのそのそ起き始める。
ただ未だに微動だにしないお兄ちゃんの頬を軽く叩きながらそらるが声をかける。
「おい。まふ。起きろ」
「……ふぁい。……なんですかぁ?」
寝ぼけ眼をこすりながら間抜けな声を出す。
そらるから状況を聞くと一瞬焦った顔をしたけどすぐニヤニヤと笑い始めた。
歌詞くんと天月、そらるはそんなお兄ちゃんを見て「何かまた変なことを考えているのでは…?」という顔をする。
もちろん私もそうだ。
「うん。休んじゃおっ!」
「えぇ!?」
ガバーッと私に覆いかぶさり、寝ていた時のような体制にされる。
どんなにグイグイ押してもどいてくれない。
オロオロしていると歌詞くんが小声でつぶやき、そらるがそこに突っ込みを入れる。
「いいかも……」
「お前まで何言ってるんだよ!」
「みんなちょっと待って!」
それまで黙っていた天月が声を荒げる。
みんなが驚き天月に注目する。
一呼吸置き、天月は真剣な顔つきで口を開いた。
「……学校に連絡しよう」
……お前もそっちか!!
「おっけー!!」
私と寝っ転がっていたお兄ちゃんはガバッと起き上がり携帯で電話をかけ始める。
「いや、ちょっとま……!?」
歌詞くんが私の口を抑え、しーっとポーズをする。
天月は隣でニヤニヤしているし、そらるはやれやれといったように頭を抱えている。
お兄ちゃんはというと……
「あ、三年二組の相川優香の兄ですが……。あぁすみません妹は今日熱を出してしまって……。はい。連絡が大変遅くなって……」
などなど、さっきの元気はどこへやら。心配で心配で…という声色で電話している。
最近演技うまくなったよな……。騙されないようにしなきゃ……。
かくして、私は休むことに。