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闇夜の雫【FF15】

第2章 中編



アーデンが自室へ足を運ぶと、懐かしい歌が聞こえてきた。

扉を開けて視線を向ければ、窓から街並みを見下ろしているユーリの姿があった。

異国の言葉を紡ぐその歌は、アーデンを眠りへと誘った不思議な歌。
だけど今回は、特に眠りに入る気配はない。寧ろ大きな違和感を覚えた。

星の病、寄生虫、シガイ、六神、神凪、ルシス、王の選定…

次々と脳内を駆け巡る言葉の端々に、不快感からか思わず眉を潜める。

そして静かに歌を紡ぐ彼女の後ろ姿を見ていると、突然激しい頭痛に襲われる。

「…っ」

思わずその場に膝をつき片手で頭を覆うと、痛みに耐える。










ーーーー立ち聞きですか?

激しい頭痛の中で、身に覚えのない記憶が蘇っていく。

ーーーーもし、あなたが本当に困った時は、私が何とかしてあげますよ

ーーーーうん、じゃぁ期待せずに待ってるよ

美しい滝の景色を背後に、金髪の少女が笑みを浮かべる。
彼女に渡した指輪は特別なものだった。

そして、血だまりに倒れた彼女。




違う…これは…身に覚えのない記憶なんかじゃ…













ーーーー人の記憶というものは、完全に消えるものではない。それだけは忘れるな。

「…っ!!!」

アーデンが驚愕の表情を浮かべて顔を上げると、こちらを静かにみているユーリの姿があった。

思い出してしまった。自ら望んで消したはずの記憶を。

復讐の邪魔になるからと、彼女の想いを無視して何もかも忘れてしまったはずだった。
それは、この世界にユーリはもう存在しないと思ったからだ。
確かにアルテマはユーリが死んでも利用するようなことを言っていた気がしたが、こんな展開は予想していなかった。
彼女ではない別の魂が、ユーリの代わりを果たすと思っていたからだ。
だけど今目の前にいる彼女は、間違いなくアーデンが知っているユーリだった。

何千年経とうとも、彼女を見間違えるはずがない。
それほどまでに、アーデンは彼女に心惹かれていたのだから。






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