第2章 中編
「……そろそろ、時間切れでしょうか」
日も落ち、暗闇に包まれた街並みを窓から見ていたナギサは、徐にその窓を開け放つ。
両手を拘束している鎖に触れると、サラサラと砂の様に溶けて消えていった。
ナギサは己の身体を見ると、皮膚の一部が黒く変色しているのが目に映る。
その事実に、驚くことはなかった。
皮膚だけでなく、彼女の周りに漂っている黒い粒子。
全ては分かっていたことだ。
だから特別驚くことも、後悔もなかった。
ナギサは適当にシーツを羽織り、その皮膚を隠す
そして開け放たれた窓から暗い街並みを見下ろし、軽く息を吐きだした。
~♪~♪
彼女が口ずさむ歌が意味するものはなんなのか。
…本当にこれでよかったのか、これからどこに行けばいいのか分からない。
アーデンはある日を境に、ナギサの身体に触れなくなった。
てっきり飽きたのかと思ったが、彼は毎日のようにナギサの元にやってきては他愛もないやり取りをしていく。
そんな彼の行動は、ナギサに迷いを生じさせていた。
あれだけの暴挙の数々を受けにも関わらず、アーデンから離れ難く思いつつあった。
だけどナギサの身体は、クリスタルはとっくに限界を超えていた。
ナギサは己の首元に触れると、あれだけボロボロの状態だったにも関わらず、残っていてくれたネックレスの存在があった。
それに触れながらアーデンと過ごした今までの日々を思い出す。
アーデンの過去に存在したあの女性は、私なのだろうか。
つぎはぎだらけの記憶を持つナギサは、何が真実で嘘なのか、分からなかった。