• テキストサイズ

闇夜の雫【FF15】

第2章 中編



アーデンは手を握り締めると、そのまま床に打ち付ける。

ユーリの身体の変化には気づいていた。

同じように染まって欲しくないと思っていたはずなのに、結局は中途半端に汚してしまった。
しかも忘れていたとはいえ、一番汚したくなかった彼女を。

アーデンは己の両手を見て、眉を潜める。
彼の身体を犯していた寄生虫はほとんど消えていた。
それが何を意味するのか、言われなくても分かる。





「…一人で何やら忙しそうですが、私はそろそろ行きますね」

アーデンが混乱で動揺していると、不意に聞こえてきた言葉。
慌てて立ち上げり彼女に手を伸ばすが、その姿は闇の粒子となり夜の街並みに消えていった。

「…くそっ!!」

アーデンはその場を翻すと、急いで彼女の後を追った。
闇の力のほとんどを失った彼は、もう姿を消して自由に動くことはできない。

心の整理がつかないまま車に乗り込み、苛立ち気味にアクセルを踏み込む。

昔も今も、ユーリは全部1人で抱え込もうとしている。
結局何時も助けられてばかりだ。

アーデンが向かう先はルシス。
ユーリがどこへ行ったのか分からないが、行くとすればそこしか思いつかなかった。


ーーーー次に目覚めた時、闇に負けてはいけませんよ

脳裏には彼女の言葉が浮かぶ。

闇に負けたわけではないが、ユーリのいない世界で生きていける自信がなかった。
結局、彼女の望まない闇の王となることで逃げてしまった。
だからある意味、闇に負けたことになるのだろう。
アーデンは舌打ちをした。

ユーリとの記憶を思い出さなければ、2度も彼女を失うことになっていた。

まだ助かったわけじゃないが、記憶が戻らなかったら彼女の好きにさせて、後を追ったりはしなかっただろう。

本当にこの世界は狂っている。
誰かを犠牲にしないと保てない星など、滅んでしまえばいいのに。





/ 105ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp