第2章 中編
彼女は今、何と言った?
運命に抗う?そんなこと、とっくの昔に諦めたことだ。
「…抗う…ねぇ」
アーデンが口元を歪めながら皮肉気味に笑う。
「そういえば、前に言ったよね。ユーリならオレを受け入れてくれるって」
アーデンは再び足を進めると、ユーリを見下ろした。
その瞳に宿る狂気の色に、ユーリは思わず息を呑む。
アーデンはその長身を屈めると、ユーリの顔を覗き込む。
触れるか触れないかの位置で、彼は残虐な笑みを浮かべたままだ。
「オレを救いたいんならさ」
クリスタルの拒絶はまだ感じられない。
彼女が抑え込んでいるのか、または違う理由なのか。
まぁこの際どうでもいいのだが。
「…受け入れられるよね?」
アーデンは片手でユーリの両頬を掴み上げると、荒々しく口づけをした。
一瞬電気のようなものが走ったが、それ以上の異変は見られなかった。
目の前には驚いたような表情のユーリ。
その表情は次第に苦痛の色へと変わっていく。
アーデンが口内へと舌を差し込み、彼女の中を嬲る。
縮こまっている舌を吸い上げ、時に噛みつくように。
口内に血の味が広がっていくが、彼女は抵抗しなかった。
「…さて、何時までもつかな」
アーデンはユーリを解放し壁に押さえつけると、何とも楽しそうな表情を浮かべる。
闇の粒子を持つ彼を受け入れるのは、恐らく苦痛なのだろう。
体液に触れるだけで、クリスタルの拒絶反応は計り知れない。
アーデンに対して何の変化も見られないのは、ユーリの意思でクリスタルを押さえつけているのか。
偽善者なのか、意地を張っているだけなのか、それとも何も考えてないのか。
アーデンは口元を歪めると、ユーリの身体をそのまま床に引き倒した。