第2章 中編
眠りについたアーデンが目を覚ましたのは2週間後だった。
気が付けば医務室に運ばれており、暫く現状を理解できなかった。
だが、あの後ユーリが行方不明になったことと、ルシスに何者かが侵入した話を聞き、確信はないがユーリを疑っていた。
最初ユーリが行方不明と聞いて思ったのが、スパイ疑惑。
あのアーデンを出し抜いて帝都の情報を漏らしたのならば、大したものだと思っていたが、それも次に聞かされたルシスでの出来事で考えが変わった。
侵入者は所属不明の女性で、クリスタルの間に入りその後消息を絶ったという。
アーデンは闇の力を使い、ユーリを探す為ルシスに1度だけ侵入した。
しかし、どこを探しても彼女の姿は見つからなかった。
帝都の情報が漏れた形跡もなければ、殺された情報もない。
アーデンは突然いなくなった彼女の行動に、戸惑いを隠せなかった。
裏切られた、というわけではないが……何故だが虚無感に襲われた。
そもそも信頼していたわけではないので、裏切られたという表現はおかしいかもしれない。
だげど、ユーリがいないこの10年間ほど、長く感じた時はなかった。
彼女の存在は、何時の間にか彼の中で大きくなっていたのだ。
ユーリはアーデンの過去を知るために、ルシスへ向かった可能性が高い。
だけど、どれだけ探しても見つけることができなかった。
そして諦めようとした今、ルシスへの復讐を果たす計画を実行した。
まずはレギスを殺し、クリスタルを奪う。
そう思ってクリスタルの間を訪れれば、10年間消息不明だった彼女がそこにいた。
しかも、クリスタルを体内に取り込んで。
その時の感情は、彼でも表現ができない。
何故?ただその言葉だけが彼の脳内を駆け巡っていた。
クリスタルの件は彼女も不本意なものらしい。
ならば、神々は何をしたいのだ。
オレを犠牲にして闇を払うのではないのか?
オレは何の為に、ここまで来たというのか?
珍しく苛立ちを感じたアーデンは、ユーリがいるであろう私室の扉を乱暴に開け放った。