第2章 中編
帝都につくと、てっきり牢獄にでも入れられると思っていたが、驚いたことに連れて行かれたのはアーデンの私室だった。
久しぶりに訪れたそこは以前と変わらず、懐かしさを覚える。
ここに来る途中、様々は景色や情報から、本当にユーリが意識を失ってから10年経ってることが分かった。
10年経ってもユーリの姿が変わらないのは、クリスタルの力なのか。
ユーリは鎖で繋がれた両手を見ながら、分からないことだらけのこの状況に頭を悩ませていた。
まさかあんな形でアーデンの過去を知ることになろうとは。
夢か現実か、確証は何もないがユーリの身に起きている不可解な現象が事実だと物語っているようだった。
しかし、もし本当にクリスタルがユーリの体内に入り込んでいるならば、色々と面倒なことになりそうだ。特にアーデン関係で。
彼のクリスタルへの憎しみは計り知れないものだろう。
それが直接向けられるのか?私に?
いや、止めてくれ、即死する自信がある。
彼のことだから拷問なんて軽くやってのけそうだ。
仮にも恋人に対してその意見はどうかと思うかもしれないが、元々私たちの関係は恋人同士と思っていいものか曖昧なものだった。
ーーークリスタルよ、また私の邪魔をするのか
ユーリが思い悩んでいると、不意に脳内に声が響いてきた。
「…えーっと確かあなたは、聖天使アルテマさん…?」
幻想の様に目の前に現れたその存在には身に覚えがあった。
夢の中で、この世界を再生しようとした神。
そしてユーリの出生に関りがあるかもしれない存在だ。
「…教えてください。私は、誰なんですか?」
ユーリは夢での出来事、これからどうすればいいのか神に尋ねた。
本当はこんな面倒なことに巻き込んで欲しくなったが、ここまで来た以上引き返すのは不可能だ。
ユーリは神が紡ぐ言葉を、1つ1つ真剣に聞き入れていた。