第2章 中編
いや、それはやりすぎなんじゃないか?
逆ギレした勢いで制圧とか…あ、もしかして他に何か理由でもあるのか?
今回の戦争の原因はユーリだと思っていたが、特に彼女を助けにきた様子はないし、寧ろ殺す気満々のようだし。
ならば、彼らの目的はまだ他にある可能性が高かった。
「…はぁ、本当に知らないんだ」
両者の間で長い沈黙が続くと、何やら盛大なため息と共にユーリは解放され軽く咳き込んだ。
目線だけ彼に向けると、まるで汚らわしい何かを見るかのような目つきだ。
いや、確かに私の姿はボロボロだが、そんな風に見なくても。
………ん?なんでこんなにボロボロなんだ?
「10年間、何してたの?それと、君の中でクリスタルの気配を感じるんだけど」
ユーリがまじまじと己の姿を見ていると、信じられない言葉が聞こえてきた。
10年間?クリスタル?
ユーリは唖然とした表情で彼を見る。
アーデンは不死身なので10年経っても姿は変わらないが、嘘を言っているようにも見えない。
そしてクリスタルが私の中にって、なんで?
「まぁいいや面倒くさい。話は後で聞くよ」
未だにユーリからの回答がないことが気に入らないのか、アーデンは魔導兵を呼んでユーリを捕らえた。
ユーリに近づこうともしない彼。
あぁ、なるほど。もし本当に私の中にクリスタルがあるのなら、彼は近づけないのか。
脳裏に浮かんだのは、夢での出来事。
少女の目を通して見た景色と、アーデンの目を通して見た景色が入り混じる。
それはまぁ、嫌われるでしょうね。
果たしてあの少女は私なのか、他人なのか。
アーデンが去った後、やや乱雑に捉えられたが、ユーリは気にすることなくぼんやりと物思いに耽っていた。