第2章 中編
ユーリはゆっくりと目を覚ました。
長い、長い夢を見ていたような感覚に身体中が怠かった。
薄暗い部屋の中で最初に感じた違和感は、あれほど眩しく輝いていたクリスタルがなくなっていたことだ。
「……ん?」
ユーリは起き上がると、首を傾げる。
軽く混乱しているユーリに追い打ちを掛けるように、何やら激しい爆発音が外から聞こえてくる。
確か私は勝手にルシスに潜入した挙句、王子を人質に取りクリスタルの間に入った。
そして意識を失う前まであったそれが、何故か消えている。
「これは、私が盗んだと疑われるのでは」
ここまで来ておいて、最早窃盗などというレベルの問題ではないことは何となく理解していた。
理解していたからこそ、軽く現実逃避に走っていたのだ。
そもそも何故勢いでここまで来たのか、あまり分からない。
「…取り合えず、逃げましょうか」
外で激しく戦闘の音が聞こえるので、もしかしたら私のせいで国際問題に発生している可能性が高い。
雑音と共に微かに流れてくる無線から、ニフルハイム帝国が攻め込んできた的な会話が聞こえてしまった。
「いや違う。私は関係ない…関係ない…」
きっとこれはあれだ。両国は元々仲が悪かったから、溜まりに溜まった鬱憤が、たまたま今日爆発したのだろう。
ユーリは軽く顔を引きつらせながら、部屋を移動する。
同僚が聞いたら、そんな夫婦喧嘩じゃないんだからと突っ込まれそうだが。
ユーリは動揺を隠せないまま、部屋を出ようと扉に手を掛けた。
「…ねぇ、ソレ、なに?」
ユーリが扉を開こうとした瞬間、ここにいるはずのない人の声が背後から聞こえてきた。