第2章 中編
ーーーこの星の犠牲になるのならば、好きにするがいい。
神はそれだけいうとその場から消えようとしたが、それをアーデンは止めた。
「折角来たんなら、1つだけ叶えて欲しいことがあるんだけど」
アーデンの言葉に一瞬彼の真意を探るような目で見られたが、了承の言葉が返ってきた。
「オレの中にあるユーリの記憶、消してくれない?…たぶん、復讐の邪魔になるから」
どこか皮肉気味に笑ったアーデン。
ーーー次に目覚めた時、闇に負けてはいけませんよ
きっと彼女は、アーデンが復讐に生きることを良く思わないだろう。
だけど、もう決めたことだった。
ーーー……その願い、聞き入れよう。
神がそう言うと、アーデンは光に包まれた。
脳裏に浮かんでいくのは、ユーリとの記憶。
決して多くはないその思い出は、1つ1つ砂の様に消えていった。
ーーー人の記憶というものは、完全に消えるものではない。それだけは忘れるな。
アーデンが再び意識を失う瞬間、そんな言葉が聞こえた気がした。