第2章 中編
遥か昔、まだ神がこの星を総べていた頃の話だ。
神々はこの星の行く末を決めかねていた。
この星は、陽の力と陰の力のバランスで保たれていた。
両者の均衡が崩れればこの星は消滅するし、片方だけ強くてもそれはそれで問題があった。
しかし、世界のバランスを保ち続けることなど不可能に近い。
均衡といっても、陰と陽の2つがこの世界に存在していればいいのだ。
だから神々は、一定の周期ごとに陰を排除する計画を立てた。
もともとこの星は陰の力が強い傾向があるので、陰と陽のどちらがいいのかと問われれば陽の方がいいに決まっている。
しかし完全に消すことは出来ないので、定期的に消すことにしたのだ。
そして、その計画に反対する神々の代表がアルテマだった。
犠牲が伴う世界など一度滅ぼし作り直すべきだと、何とも過激な発想を持っていた。
だがそれもこれも、これからこの星で生きていくであろう人間の為を思ってのことだった。
そして後に、神々が起こしたと言われる古代戦争に負けたアルテマは、その存在を消された。
今この星に残っている六神こそ、古代戦争で勝利を収めた神々だ。
「…勝手にオレを巻き込まないでほしいんだけど」
静かに話を聞いていたアーデンだが思わず口を開いた。
この神の話を聞いていると、なんともこの星をどうにかしろとオレが言われている気がするのだ。
ーーーおまえではない。彼女の一族がそうだ。私の意思を受け継ぎ、この世の仕組みを変えようとしていた。
「あぁ、そう。それは残念だったね」
神の言葉に浮かんだのはユーリの最後の姿。
彼女の一族は、恐らく全て滅んだ。だからこの神の野望もなくなったようなものだろう。
ーーー私の意思は永遠に消えることはない。巻き込んでしまった彼女の一族には申し訳ないが、役目を果たしてもらわなければならない
「…へぇ、死んでも利用するつもりなの?」
神と名乗るくせに、とんだ野郎だ。
そう軽蔑の眼差しを向けるが、神はその問いに答えなかった。