第2章 中編
意識を失ったアーデンは、ある夢を見た。
闇の中を漂っている彼の目の前に現れたのは、聖天使アルテマと名乗る神。
どうやらユーリの願いを聞き入れて、アーデンから闇を切り離すようだった。
「……いいよ、このままで」
アーデンは周りを漂っている光の粒子を手で払いのけると、力なくそう呟いた。
「どうせ、オレが犠牲にならなかったら次の誰かが犠牲になるんでしょ?」
アーデンの問いかけに、神は答えなかった。
「…っは、だったらオレは闇の王らしく、ルシスに復讐してやるよ」
他の誰かが犠牲になることなど知ったことではないが、ユーリのいない世界を生きようとは思わなかった。
だけど、ユーリが救おうとしたこの命を無駄にするわけにはいかない。
だから本当は反吐が出そうになるが、この星の犠牲になることにしたのだ。
ーーーそれを、彼女が望んでいるとでも?
アーデンの言葉を黙って聞いていたアルテマだったが、漸く口を開く。
「…望んでないかもね」
彼女の考えなんて、通常でもよく分からないのに、アーデンに生きて何を望んでいるかなど到底理解できるはずがない。
そもそも、オレの知っている六神の中にアルテマなんて神はいない。
目の前にいるこいつこそが、悪の根源ではないのだろうか。
ーーー私の肉体はすでに消滅し、今や残っているのは精神のみである
アーデンからの疑わしい視線を感じたのか、アルテマは口を開いた。
ーーー私もまた、この星の仕組みを憐れに思い、変えようとした者の1人だ。