第2章 中編
祖母から教えてもらった歌の中には、禁忌とされている歌があった。
それがどのような効果がもたらすのかは、誰も分からない。
だけど彼女がまだ幼い頃、神と呼ばれるモノから教えてもらったことがる。
「アーデン。あなたには長い眠りについてもらいます。」
教えられた禁忌の歌の全容。
それは、歌人の思いによって歌の効力が変わるものだった。
「不死身のあなたでは、ここで過ごす時間は苦痛以外のなにものでもないでしょう。だから、取り込んだ闇が消えるまでちょっと寝ててください」
彼女は魔法陣が描かれた鎖に触れた。
恐らく強力な魔術が施されているので、術者しかこの鎖を解けないだろう。
術者が誰かも分からないし、私の歌で彼の闇が消えるのかも分からない。
全ては賭けだった。
「眠るって、オレのことはいいんだよ。早くここから出ていってくれ」
次第に聞こえてくる大勢の足跡。
血まみれの彼女の姿を見ると、ここから逃げ出すのも難しいかもしれない。
いや、まさか…
「アーデン・ルシス・チェラム」
辿り着いた1つの可能性。
「次に目覚めた時、闇に負けてはいけませんよ」
ユーリはここで死ぬつもりだ。
アーデンは彼女を止めようとしたが、彼女は構うことなく歌を紡いだ。