第2章 中編
この島に幽閉されてどれくらい経ったのだろうか。
時間の感覚も分からず、人ではなくなった彼は死ぬことができない。
その事実が、一体どれほどの絶望を彼に与えているのか。
空腹も、睡魔もなく、ただこの場に囚われ続ける。
常人なら発狂しているところだろう。
アーデンは朦朧とする意識の中で、闇の先へと視線を送る。
脳裏に浮かんだのは、淡い金髪の彼女の姿だった。
今頃あいつは、幸せに過ごせているだろうか。
ユーリはきっと気づいてないが、彼女と過ごした時間で、アーデンはだいぶ救われていた。
出来ることならば、最後の時間をもう少しゆっくり過ごしたかった。
「…ユーリ」
枯れた声から紡がれた言葉が、辺りに響き渡る。
「はい、呼びましたか?」
暗いはずのこの場所に、一筋の光が差し込んだ。
開かれた扉の先に立つ、思い馳せていた人物。
アーデンは光の眩しさから目を細めたが、直ぐに驚いたように目を見開く。
どうしてここに。
言葉に出さなくても、彼の表情がそう言っていた。
ゆっくりとアーデンに近づく彼女は何時もと変わらない様子だったが、不意に血の匂いがした。
目が慣れてくると、傷だらけの彼女の身体が浮かび上がる。
「まったく、どこに幽閉されたかと思えば、こんな場所まで左遷されるとは」
ここに来るまで相当苦労しましたよ。
迷惑そうな表情でそう伝えてくる彼女だが、その瞳には色々な感情が混ざり合っていた。
怒り、悲しみ、後悔、そして決意。
一体なぜ彼女がここにきたのか。
その理由を、彼が知るはずもなかった。