第2章 中編
ユーリが幼い頃アーデンを治療した時、なぜかその力が彼にも宿った。
そして、この星を蝕む寄生虫を彼は取り込み続けた。
全ては神の思惑通りとも知らずに。
ーーーー何処へ行く
ユーリがアーデンの後を追っていると、随分と聞いてなかった声が脳内に響いてきた。
「責任を、果たしにいくだけです」
ユーリは激しい頭痛に襲われたが、その足を止めることはなかった。
知らなかったとはいえ、黙って見過ごすことはできない。
ユーリがあの日力を与えなかったら、彼は今頃こんな風に苦しんでいなかったはずだ。
ーーーー貴様ごときに何ができる。あの者はこの星の為に選ばれた。その者を救うことが何を意味しているのか、分からんでもあるまい。
神…剣神バハムートがユーリの目の前に現れた。
初めてその姿を見たユーリは足を止める。
巨体な存在を目の前にしても、彼女は臆することなくその姿を見上げた。
「そうですね。でも、知ってしまった以上、見殺しにはできません」
そう遠くない未来、アーデンはこの星の、闇の王となる。
そして闇の王を倒すべくして、いずれ光の王が生み出される。
そうやってこの星の闇を排除し、歴史を繰り返している。
なんとも馬鹿げたストーリーである。
ユーリは嘲笑うかのように口元を歪めると、そのまま足を進めた。
ーーーなんとも愚かな。
だが、バハムートを横切ろうとしたとき、激しい衝撃波に襲われた。
ユーリの身体は吹き飛び、木に打ち付けられる。
ーーー聖天使アルテマの血を受け継ぐ者よ、その存在を黙って見過ごすわけにはいかない。
ユーリが軽く咳き込んでいる時、不意に聞こえてきた言葉。
意味が分からないと視線を向けると、彼は剣をこちらに向けていた。