第2章 中編
「迷うくらいなら、行かなければいいじゃないですか。あなたの人生なのですから、自由に生きてください。例え王子という立場に縛られていたとしても、その権利はあると思います」
まぁ、今まで十分自由に生きていたと思いますが。
相変わらず最後に余計な言葉をつける彼女に、アーデンは苦笑をする。
何故最後にこの場所に来たのか。
彼女の言葉に、そうだねと呟き来た道を戻っていく。
「ユーリ」
ユーリはアーデンが立ち去ってもその場から動かなかったが、不意に呼ばれて彼の方へ身体を向ける。
なぜ私の名前を知っている?
そう疑問に思ったが、キラキラと光る何かが飛んできた。
「ありがとう」
飛んできたものを手に掴むと、そこには大きめの指輪があった。
「それを売れば、暫く生活には困らないと思うよ」
アーデンはそれだけ言うと、手のひらを振りながらその場を立ち去った。
「……これは、彼が身につけていたものでしょうか」
ユーリは手元にある指輪を握り締めた。
このまま彼を止めなければ、きっと取り返しのつかないことになる。
だけど、彼を止められる理由が、ユーリにはない。
静かに去っていくその後ろ姿を、ただ見ていることしか出来なかった。
「……最後まで、付き合いますよ」
アーデンの姿が見えなくなると、ユーリはそっと息を吐きその後を追う。
ここ最近、1つだけ思い出した記憶があった。
あれは私がまだ小さい頃の出来事だ。
あの頃は不思議な力を使うことができ、目に見えない何者かの声を聞くことができた。
そんなユーリの存在を、村の人々は大切にしてくれた。
今となっては皆、病や野党に襲われて死んでしまったが。
ーーーあの日、彼を…アーデンを救うように言われた意味が分かった気がします。
本当にこの世の中はどうかしている。
神だのなんだの崇拝するのは自由だが、この星の神はそんないいものではない。
光と闇の戦い。強いてはこの世界の陰と陽のバランスを保つための犠牲として、アーデンは選ばれたのだ。