第2章 中編
その後は適当に食事を済ませ、彼女が住んでいると思われるボロ家に向かおうとしていた。
「…オレが頼めば、多分この街で保護してくれると思うけど」
二人並んで暫く歩いていたのだが、街を出る時不意にアーデンが口を開いた。
「………はぁ」
ここに来るまで幾つか会話をしたが、どれもあまり覚えていない。
彼女は街の出口付近で漸く我に返ると、盛大にため息を吐いた。
「保護されるのも、身なりを整えるのも、私なんかよりあなたがするべきでしょう?」
「……ん?」
ボソリと呟くように言われた言葉に違和感を覚えたアーデン。
何故彼女は、アーデンが命を狙われているのを知っている。
「…あぁ、世間に疎い私でも、耳に入ってくる噂話はあるんです」
アーデンの怪訝な表情に何かを感じたのか、彼女はそう付け加えた。
「ふぅん、そう」
アーデンの気のない返事に彼女は肩を竦ませると、アーデンの前に立ちその瞳を見上げた。
「……こんなこと言うガラではないですが、今日はありがとうございました。余計なお世話…いえ、気遣いをして頂き感謝します」
「…はは、相変わらずだね」
交わる金色の瞳。
今まで異性に対してあまり抱いたことのない感情だったが、彼女は本当に美しくなった。
エイラも絶世の美女と言われているが、アーデンは特に関心を持たなかった。
恐らくアーデンは、彼女の中身も含めて気に入っているからそう思ったのだろう。
「アーデン」
ふとアーデンが考え事をしていると、交わった視線のまま彼女が口を開いた。
「もし、あなたが本当に困った時は、私が何とかしてあげますよ」
アーデンの手を握り、静かにそう伝えた彼女。
「…うん、じゃぁ期待せずに待ってるよ」
アーデンは握られた手を握り返すと、その口元に笑みを浮かべたのだった。